マナーうんちく話553≪「和の作法」と「一回一動作」のお勧め≫
海外生活が長くなり、思わず「お茶漬け」が恋しくなった経験をお持ちの方も多いと思います。
また一杯飲んで自宅に帰って、軽くお茶漬けを頂きたくなることも多々あります。
さらに仕事が忙しくてまともに食事の時間が取れない時に、とりあえずお茶漬けでサッと済ましてしまうケースもよくありますね。
ただ今とは比較にならないほど質素な生活をしていた、江戸時代の夕食はお茶漬けが定番だったとか・・・。
当時は、ご飯は朝焚いて、昼は野菜や魚などのおかずを一緒に食べましたが、夜はご飯も冷たくなっているので、それに熱いお茶をかけ、漬物と一緒に食していたようです。
「お茶漬けサラサラ 沢庵ポリポリ」といいますが、先人は食べる楽しさを味わう風流と共に、音で食べる楽しさを身に付けていたのでしょうか?
大変心地よい響きですね。
ちなみに江戸時代中頃には白米食が普及してきますが、それにつれ沢庵にもいろいろな工夫がなされてきたようです。
栄養学的観点からもすばらしいことで、白米に酵素や酵母や乳酸菌等が含まれている沢庵を一緒にとることは、とても合理的な食べ方だったと思います。
また江戸中期になると外食産業も栄え、手軽にお茶漬けを食せるようになってきたようで、鯛の身を載せた鯛茶漬けを始め、海苔や鮭や梅干しは今でも定番ですね。
そして高級料亭などでは本格的な和食「本膳料理」などが発達し、のちにペルー艦隊の接待などに饗されるようになるわけですが、これには非常に高度な食べ方の作法が伴い、美しい食べ方が要求されます。
では熱いお茶漬けの食べ方はどうでしょうか?
もともとお茶漬けはサラッとたべるものです。
また器は、直接口に触れると熱い料理を守る要素もあります。従ってお茶漬けは器に、口を直接つけて食べてもよいということになります。
「卵かけご飯」や「雑炊」のように熱くて直接つかみにくい食べ物もそうです。
ちなみに卵は食べるのが簡単なうえに大変栄養があり、江戸時代には大変重宝されていたようです。
当時は卵の上に小さな穴を開け、直接飲み込む食べ方に人気があったようですが、炊き立てのご飯に生卵をかけて食べる習慣もこの頃からだといわれています。
そしてお茶漬けや卵かけご飯に付き物の「沢庵」ですが、江戸時代に臨済宗の沢庵和尚が作った漬物という説が有力です。
今でも和食には漬物が好まれますが、では沢庵は「二切れ」がいいのか?「三切れ」がいいのか?どうおもいますか。
これにはいろいろな説がありますが、江戸では沢庵は「二切れ」が好まれたようです。
一切れは「人切れ」につながり、「三切れ」は「身を切る」につながるのが理由です。
ただ関西では三切れは3方につながり「縁起が良い」ということで、三切れのところもあるようです。色々な捉え方があるものですね・・・。
最後に「茶碗蒸し」の食べ方はどうでしょう?
今はスプンが用意されますが、茶碗蒸しは本来「箸」でいただくもので、直接器に口を付けてもよい食べ物です。
茶碗蒸しの蓋を取ったら、箸で器の内側をぐるりっと、なぞります。
具を食べたら後は両手で器を持って、口を付けて吸ったらいいでしょう。
昔は、茶わん蒸しは吸い物の代わりとして出されていたので、このような食べ方が認められているわけです。