マナーうんちく話1912《「春の七草」と「秋の七草」どう違う?では夏と冬の七草は存在するの?》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

「明けましておめでとうございます」という挨拶で、日本は全国津々浦々で新年を迎えるわけですが、もとは五穀豊穣や子孫繁栄などの多くの幸せをもたらして下さる年神様への祝福の言葉だといわれています。

その年神様も元日、3が日、松の内、七草粥、小正月と次第に人から遠のかれ、一連の「ハレ」の行事が終わり、日常の「ケ」の状態に戻るわけです。

ところで1月7日は「人日の節句」で、一年間の健康や豊作を祈願して「七草粥」を食す日ですね。だから人日の節句は「七草の節句」ともいわれます。

ちなみに七草とは本来は「秋の七草」をさしますが、現在では春秋の代表的な7種類の菜や草花のことです。ただし七草といわれるものは他にも存在するので、それぞれ簡単に触れておきます。

【春の七草】
春の七草はせり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろで食用です。

この7種の菜を刻んで「七草粥」を作るわけですが、もともと万葉から平安の時代には野菜が不足する冬場に、雪の下から目を出した若菜を摘んで食す「若菜摘み」という習慣があったといわれます。

七草粥を食すようになったのは鎌倉時代ころからといわれていますが、「邪気払いや無病息災」「冬場に不足しがちな栄養補給」「正月料理の食べ過ぎで弱った胃を癒す」目的があったようです。

そして江戸時代になると幕府が「五節句」を公式行事として定め、1月7日の「人日の節句」には、将軍も武士も庶民も全員揃って七草粥を食したとか・・・。

現在は多彩になっており、スーパーなどで販売されているパックのものは別として、地域の実情に応じた旬の食材で作れば十分だと思います。

我が家では毎年畑で栽培している「すずな(かぶ)」と「すずしろ(大根)」を主として、その時に手軽に手に入るセリや春菊などを使用してオリジナルな粥を作ります。

【秋の七草】
一方「秋の七草」は万葉集で山上憶良が詠んでいますが、はぎ、おばな、くず、なでしこ、おみなえし、ふじばかま、あさがおです。いずれも観賞用で、早い花で6月頃から遅い花で11月頃まで楽しめます。

また美しい花を愛でるだけではなく、女郎花、桔梗、葛などの根は薬用にもなります。

【その他の七草】
「七草」といえば一般的には春と秋の七草ですが、春秋の七草のように故事に基づくものではありませんが、実は夏にも冬にも七草は存在します。

●食糧難に耐えるために付けられた七草
太平洋戦争が終局を迎えた日本は大変な食糧難で、5月から9月頃にかけ全国の道端や野原で見つけることができる食用になる草を「夏の七草」として食したといわれています、露草やシロツメクサなどがあったようです。

●植物学者が名付けた七草
明治、大正、昭和にかけて植物学者などが独自に選定した多彩な「七草」があります。ひるがお、ゆうがお、ゆり、あざみ、なでしこ、スイレン、ミズアオイなどで涼しさを呼ぶ「夏の七草」でしょうか。

●昔の七草
米、粟、黍、稗、胡麻、蓑(みの)、小豆
現在のような七草粥が食されたのは鎌倉図第頃からだといわれていますが、それ以前は穀物でお粥を作っていたようです。

●小正月に食べる小豆粥
米、麦、粟、稗、黍、胡麻、小豆
小豆には邪気を払う効果があるとされ、邪気払い及び無病息災を祈願して食します

●冬至の七草
なんきん、きんかん、ぎんなん、れんこん、うんどん、かんてん、にんじん
冬至は太陽の力が最も弱くなる最悪の日とされ、幸運をもたらすと考えられていた「ん」の字のつくものを食べますが、より運に恵まれるように「ん」が二つ付くものを7種選んだようです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

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