マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
2月は1年の内で最も寒い時期で、衣服をさらに着なければいけないので「衣更着(きさらぎ)」と言いますが、春に向けて万物が始動し始める時でもあるので「如月」とも表現されます。
さらに梅の花が咲き始めるので「梅見月」ともいわれます。
そして2月3日は「節分」で、その次の日は立春です。
節分には豆まきや、このコラムでも何度か取り上げた、和紙で縦に書いた「立春大吉」という魔除けの札を貼るしきたりがあります。
いずれも長い歴史を有する伝統行事ですが、最近では「福を巻き込む」といわれる太巻き寿司「恵方巻」を、福をもたらす神がいる方向に向かって、願い事をかなえながら、無言で丸かじりする行事が主流になり、長年続いた「豆まき」「立春大吉の貼り紙」「玄関に鰯の頭やひいらぎを置く」年中行事が、次第に影を潜めていく感じがあります。
節分に使用する大豆を売るより、一本何千円も何万円もする「太巻き寿司(恵方巻)」を大量に生産し販売するほうが、圧倒的に売り上げが良くなるので、致し方ない面もありますが、時代の流れでしょうか・・・。
「節分」の意味や意義を理解し、後世に残したいものです。
節分の「豆まき」は、四季が明確に分かれている日本ならではの文化の一つだと思いますが、節分とは季節の分かれ目で、四季の国日本には一年に4回あります。
立春、立夏、立秋、立冬の前日ですが、実はこの季節の分かれ目は大変不安定な時期です。
不安定なところに向かって眼に見えない邪気がやってくるわけです。
特に旧暦の立春は今の正月に当たり、その前の節分は大晦日なので、邪気払いが大切だったようです。
ここで邪気に対するしかるべき対策を講じておかないと、新しい年に良くないことが起こると考えられていたのでしょう。
ちなみに「邪気」とは、飢餓や災害や病気などで、昔の人はこれを鬼と考えたようですね。
そこで邪気(鬼)を払う効果があると考えられていた穀物をまいて、邪気(鬼)の侵入を防いだり、やってきた邪気(鬼)を追い返すわけです。
特に大豆は穀物の中でも邪気を払う効果が高く、また豆は「マメ」にも通じ、蒔いた後処理も簡単なので重宝されたのでしょう。
鬼は火気を嫌うので、生の豆ではなく炒った豆がより効果的になります。
つまり節分に豆をまく意味は、不安定な時期になると邪気(鬼)がやってくるので、それを払う効果があると考えられていた穀物で追い払うという考えです。
また邪気を払う効果があるものは、穀物のほかにも、強烈なにおいのするもの、先の鋭いもの、音などがあります。
例えば節分に使用する柊の葉っぱや、鰯の頭や、あるいは桃の節句に使用する桃、端午の節句で使用する菖蒲などもそうです。
「鰯の頭も信心から」という言葉もこの風習からきています。
往々にして旬のものは生命力が旺盛で、それには邪気払いの効果があると考えられていたようです。
加えて「立春大吉」の文字は左右対称で、表から見ても裏から見ても、前から見ても後ろから見ても立春大吉になり、鬼が勘違いするからだといわれています。
もっとも国民の過半数以上の人が、大人も子供も、みんな無言で恵方巻を食し、残った恵方巻が大量廃棄されている姿を見たら鬼もさぞかし驚くかもしれませんね。
地球上には飢餓に苦しんでいる人が非常に多いといわれます。
先進国として飽食に甘んじることなく、飢餓を共有し、賢くふるまいたいものですね。