マナーうんちく話535≪五風十雨≫
旧暦では3月は「弥生」ですが、「弥」という漢字は「弓の弦が緩む」意味だそうです。
今まで張りつめていた寒さが緩んで、草木の芽がほころび始めるわけですが、楽しいイベントに恵まれる月でもあります。
3月3日は五節句の一つ「上巳の節句」です。
上巳の節句は、桃が咲く時期の節句ですから「桃の節句」ともいわれます。
但し現在では新暦で旧暦と約ひと月くらいの差があるので、実際に桃の花が咲くのはまだひと月先になります。
五節句は江戸幕府が作った公的行事ですが、旧暦と新暦のずれのせいで、なじまない名前もあります。
桃の節句もそうですが、9月9日の「重陽の節句」もしかりです。
重陽の節句は菊の節句ともいわれますが、9月9日といえばまだ向日葵が全盛の頃ですからピンときませんね。
ちなみに桃は中国では邪気を払う効果があるとされており、3月3日の上巳の節句の時は、桃の花びらを浮かべた「桃花酒」を飲んでいたそうです。
一方重陽の節句では、邪気を払い延命長寿を願って、菊の花びらを浮かべた「菊酒」を飲みます。
昔の人は結構酒が好きだったようですね・・・。
ところで日本のモノ作りは世界的に有名ですが、昔は物を小さくして楽しむ文化が栄えていたようです。
そして、小さくて可愛らしいものを愛でる価値観は「雛飾り」に明確に表現されています。
なるほどと頷づける点があります。
もともと「雛」とはひな鳥といわれるように「小さい」という意味です。
そして雛飾りは皇室の結婚式を表現したもので、人形や小道具に至るまで、非常に小さいけど鮮明に描かれており、当時の職人のスキルの高さに感心します。
さらにこの雛飾りには、日本の文化の特徴が至る所に表れています。
先ず3月3日の数字ですが、当時の日本は中国から伝わった陰陽思想の影響を強く受けており、奇数と偶数では「奇数」を格上としました。
だから3月3日という奇数が重なる数字にもこだわったわけですね。
雛飾りも3段飾り、5段飾り、7段飾りと奇数でまとめられています。
加えて右と左では「左」を上位としましたので、人形の男雛が左に位置します。
但し現在の国際基準(プロトコール)では右上位になるので、男雛は右に位置するケースが多いと思います。
つまり日本式に並べるか、国際基準に基づくかで、並べ方が異なるということです。
只今全国津々浦々で「ひな祭り」が開催されています。
色々な知識を基に廻れば楽しさも増してくるでしょう。
次回もお楽しみに・・・。