マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
昔は満年齢ではなく「数え年」でしたから、誰しも正月になれば平等に年を取ります。
また旧暦の正月は立春ですから、「厳寒の冬を無事に過ごせるように」と、おめでたい語呂合わせにこだわる気持も理解できます。
そして江戸時代になると、みりんや濃い口醤油の発明とともに、食文化が急速に発達するわけですが、年の初めの正月料理には特に江戸っ子の多彩な知恵がちりばめられています。
豊かな時代になったとはいえ、今年も新しい年を迎えることができる喜びと感謝の気持ちを忘れずに、美味しく、楽しくおせち料理をいただけるといいですね。
前回からの続きです。
【おせち料理はいつ食べるの】
大みそかは徹夜で歳神様をでお迎えして、おもてなしをしなければなりません。
現在ではカウントダウンのイベントなどがあり、丁度真夜中の12時になった時点で年が変わりますが、時計のない時代は日没になれば一日が終わります。
だからおせち料理は、12月31日の夜になって、「年越しそば」と一緒に食べたようです。
【本来は歳神様とともにいただく料理】
「正月」とは先祖の集合霊や穀物神と呼ばれる「歳神様」をお迎えして、おもてなしして、お見送りする一連の行事です。
家族の幸せ、家内安全、健康長寿、五穀豊穣などをもたらしに里帰りする歳神様をお迎えするわけですから、12月31日は徹夜でお迎えします。
そしていよいよ歳神様をお迎えしたらまずはご馳走をお供えします。
その後歳神様とともに、家族が一緒に頂くのが、本来のお節料理の食べ方です。
歳神様とともにご馳走をいただく文化は恐らく日本独自だと思いますが、ユネスコが和食を世界無形文化遺産に登録した大きな理由の一つに、和食とこのような年中行事とのかかわりがあります。
また「屠蘇」の風習は中国から始まったようですが、日本では平安時代から宮中行事になっていたようで、江戸時代には庶民にも広まります。
一年の厄を払い、健康長寿につながるとされています。
年下の者からいただくのがマナーですが、長寿の人がいれば、それにあやかっていただいてもいいでしょう。
飲み方は、三度注いで、三度で飲むのがお勧めですが、最初の二回はかたちだけでけっこうです。
現在では「手作り派」よりは「出来合い派」が多いようですが、いずれにせよ「おせち料理」は日本人にとって最も身近で大切な伝統料理です。
おせち料理を通じて、和食に込められた豊かな精神文化とともに、南北に細長い日本の多様な風土を改めて感じていただきたいものです。