マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
四季に恵まれた日本には世界屈指の年中行事があるといわれています。
長い歴史の中で自然発生的に生まれたものもあれば、海外から伝わったものもあります。
明治以前から続く行事は比較的中国の影響を強く受けていますが、明治維新以降に入ったものは欧米諸国の影響が強いようです。
江戸時代にはキリスト教は受け入れられなかったけど、明治になり許されるようになると「クリスマス」が日本の歳末行事の仲間入りするようになりました。
デパートなどが仕掛けたクリスマスプレゼントの巧みな販売戦略の波に乗り、わずか一世紀余りで、正月とともに数ある年中行事の中でも不動の地位を占めるようになったのは周知のとおりです。
考えてみればおかしなもので、神様《神道)・仏様(仏教)の国で、キリストの誕生日を、他のキリスト教国に負けずとも勝るくらいの勢いで、盛大なイベントを展開するようになり、それにつれお釈迦様の誕生日は影が薄くなりました。
私は年に数十回くらい、日本の年中行事のしきたりやマナーに関連する講演を受けますが、いつもこのようなお話をします。
自国の文化が他国から入ってきた文化のあおりを受け、薄れていくことは寂しい気もしますが・・・。
さて、それはさておき、クリスマスといえばキリストの誕生日であるはずですが、ではなぜ「サンタクロース」が出てくるのでしょうか。
今まで改めて考えたことはなかった気がしますが、幼い頃に、靴下にプレゼントを入れてくれるという話を聞いたことがあるような気がします。
歴史をさかのぼっていくとどうやら4世紀の東ローマ帝国での物語のようです。
聖ニコラウスという司教が、大変貧乏な家がありそこの娘が身売りされるという話を聞きつけ、その家を訪れて、煙突から金貨を投げ入れ、娘を救ったという伝説に由来するそうです。
寒い地方ですから家には暖炉があり、そこには靴下をつるすわけですが、たまたま煙突から投げ入れられた金貨が靴下に入ったので、クリスマスプレゼント=靴下になったようです。
似たような話はどこの国にもあるようですね。
ヨーロッパの色々な地域では、冬になると様々な亡霊が出現し、「悪い子はいないか」と言って街をさまようとされていたようですが、この亡霊とともに聖ニコラウスも街を練り歩いており、悪い子には鞭を、いい子には菓子を与えていた物語が継承されています。
それらの物語がいろいろと複合されて現在のスタイルになったと考えられますが、キリスト教以前の行事も加味されているので奥が深いようですね。
日本の「なまはげ」の文化と、どこか似ている気がします。
「なまはげ」は、「悪い子はいねが」といって出刃包丁をもって登場しますが、本来の目的は神として家々を訪れ祝福するそうです。
さらに一年で最も夜が長い「冬至」の捉え方は同じような気がします。
神道や仏教とキリスト教には、これといった歴史的な接点はないように思いますが、同じような話が多々あるのに驚きます。
例えば仏教でもキリスト教でもローソクがつきものですが、恐らく元をたどれば同じような意味になると思います。
いかに国際化時代でグローバルな時代になったとはいえ、神様や信仰のあり方、加えて文化に国を超えた相違点や共通点が見えてくるようで興味がわきますね。
ちなみに裕福な家に生まれたニコラウスは貧しい人に金や物を与えた聖人として親しまれ、14世紀ころからその誕生日を祝うようになったそうですが、オランダ語で「シンタクラース」となり、これが「サンタクロース」になったそうです。
やがてサンタクロースはトナカイが引くソリでやってくるといわれるようになったとか・・・。
日本の正月とは趣が異なる文化ですが、いずれにせよ、プレゼントを通じて思いやりの心を発揮する日本人の心に受けたようですね・・・。