マナーうんちく話535≪五風十雨≫
季節外れの台風の影響もあり、寒さが一段と厳しくなり、火の温かさが恋しくなる頃になりました。
それもそのはず、三日の「文化の日」を過ぎれば、七日には二十四節気の一つ「立冬」を迎え、暦の上ではこの日から冬になります。
秋の夜長と言いますが、灯火親しむこの時期は、まさに読書が最適です。
立冬の二週間後には二十四節気の「小雪」で、雪の字がつく通り、この時期には山の峰には雪が降るようになり、寒さの訪れを益々感じるようになり、いつの間にか冬を受け入れるようになるわけですね。
ところで春は桜で花見ですが、この時期は何といっても紅葉がきれいになり「紅葉狩り」が楽しみです。
紅葉狩りは花見と同じように、日本の四季を楽しむ様々な行事の中でも最も大きな楽しみの一つですね。
これは源氏物語にも登場しますが、それが1000年以上も脈々と伝わっているのはすごい文化だと思います。
また「紅葉狩り」を「モミジガリ」と言いますが、「狩る」という意味はウサギやシカなどを狩る意味から、野菜や果物を狩る意味にも使用されるようになり、やがて何かを観賞することまで「狩り」といわれるようになりました。
さらに園芸の世界では、幼い子供の手の形のように、切れ込みが三つ以下のものが「カエデ」で、五つ以上あるものを「モミジ」と表現するそうです。
また紅葉を「黄葉」と表現することがありますが、かつて黄色が高貴とされたため、黄色い花を愛でたことに由来するという説があります。
加えて紅葉を形容する言葉は「錦」ですが、絢爛豪華な着物に例えたわけです。
そしてモミジといえば鹿が登場しますね。
他には「虎と竹藪」、「唐獅子にボタン」などが有名です。
中でも鹿は歌に詠まれるくらい身近な存在です。
《奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲し》(猿丸太夫)
今では鹿といえば農作物を食い荒らす有害動物で、ジビエ料理屋やジンギスカンが思い浮かびますが、先人は鹿のさびしそうな鳴き声を聞いて、秋のもの悲しさに浸っていたのでしょうか。
ちなみに「ジビエ」はフランス語で(英語ではゲーム)、食材として狩猟によって捕獲された野生の鳥獣で、鹿を始め猪、野兎、熊、雉、マガモ等が一般的です。
これに対して私たちが普段食している牛肉、豚肉、鶏肉は飼育されています。
秋と冬が交差する11月は浮き浮きしてくる春と異なり、なんとなくメランコリックな気分になりがちですが、月がきれいな時期です。
ちなみに11月1日は「十三夜」です。
熱燗をいただきながら風雅な月を楽しむのもこの季節ならではです。
十三夜は満月ではないので月が少し欠けて見えます。
先人は「完璧ではなく、未完成のものに対して、これからの期待を込めてこれをよし」としたのでしょうか。
大変粋な文化だと思います。
加えて11月1日は「古典の日」です。
日頃なじみがないかもしれませんが、源氏物語に由来して制定されたそうですが、今から約1000年年も前にあれだけの長編小説を女流作家が世に出しているわけですから、これはとても素晴らしいことで世界に誇れることだと思います。
気温の変化が激しくなっています。睡眠、栄養、そして休養をしっかりとって元気でご活躍下さい。