マナーうんちく話535≪五風十雨≫
旧暦の8月15日は「仲秋の名月」で、「十五夜」とも呼びます。
名月を愛でる習慣はすでに平安貴族の間で見られたようですが、江戸時代には一般庶民にまで広まり、全国的な行事になります。
農村では豊作に感謝して、秋の七草などとともに畑で収穫された野菜や果物をお供えしたわけですが、特にこの時期には里芋が旬になるので「芋名月」とも呼ばれます。
そして仲秋の名月の次は晩秋の月を愛でるわけですが、この時にはあえて「十三夜」の月を楽しみます。これは満月になると後は欠けるだけですから、十三夜を楽しんで後に希望を抱かせたのでしょう。
「完璧ではないものを良」とした日本人ならではの感性だと思います。
そういえば扇子を使用するときも、8割から9割広げて少し残しますが、同じ感覚だと思います。
また茶碗などにも月が多く描かれていますが、機会があればよく観察してください。
たぶん十五夜より十三夜のほうが多いと思います。
先人は少し余白を残すことを大切にしたようで、食事でも「腹8分に医者いらず」と言われます。
ちなみに十三夜の月を愛でる時期は豆や栗が収穫できる頃なので、十三夜は「豆名月」あるいは「栗名月」と呼ばれます。
しかし我が家ではクリは今頃収穫できますが、里芋はまだあとになります。
いずれも秋に収穫するのは同じですが、芋になるか豆になるか栗になるかは地域によりそれぞれでしょう。
そしてこの二つのお月見は両方愛でるのがよく、片方だけ愛でるのは「片身月」と言って縁起が良くないとされています。
十五夜を愛でたら十三夜も十五夜の時と同じ場所で愛でるのがお勧めです。
今年は仲秋の名月は10月4日で十三夜は11月1日です。
ところで十五夜には米粉で作った団子を15お供えして、十三夜には13個お供えするといういわれがありますが、ススキをお供えするのは、ススキは神様の依り代になるのと、イネ科の植物だからという説が有力です。
一年で一番美しいといわれる仲秋の名月を団子や野菜や果物、そして秋の七草などを備えて、家族水いらずのお月見は大変お勧めですが、あいにく十五夜は統計学的には、晴れる日は少ないようです。
また昔は、お月見の時にお供えした団子や野菜は、近所の子供が持ち去ってもいいことになっていたようです。私もおぼろげですが記憶に残っています。
今では信じられない話かもしれませんが、これはお月さまにお供えした供物をより多くの人と分け合うことで、豊作の恩恵が受けやすいと考えられたからだそうです。
今とは比較にならない貧しい時代のほうが、なんだかおおらかな考えだったわけですね。
個人的にはこのような文化はぜひ次世代に伝えたいと思っていますが、今ではお月見よりハロウィンのほうがはるかに大きなイベントになっているようですね。
皮肉な現象だと思いますが、いかがでしょうか?
欧米の文化に押されて、日本の伝統ある行事が廃れていくのは寂しいものです。
和の礼儀作法や和食のマナー等もしかりです。
何もかも非常に恵まれた日本が、国連が発表する幸福度ランキングで上位になれない理由が、この辺にある気がしてなりません。
次回に続きます。