マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
早朝からの蝉しぐれに夏本番を感じますが、8月の声を聞くと暦の上では8月7日の「立秋」から「秋」になります。
つまり暑中見舞いから「残暑見舞い」になるわけです。
ところで和風月名では8月は「葉月(はづき)」です。
これには諸説ありますが、木の葉が落ちるころだから「葉落ち月」が転じて「葉月」になったという説が有力です。
他には葉が黄色く紅葉するからとか、稲の穂が張る月だから「葉月」になったという説もあります。ただしなぜ「葉」の字を当てたかは明確ではありません。
8月になぜ葉が落ちたり色づいたりするの?と思われる方が多いと思いますが、旧暦の8月は今の9月中旬から10月の中旬に当たるからでしょう。
昔、葉月は「ハツキ」と発音していたようですが季語は「秋」になります。
現在は国際化の進展を受けているせいもありますが、8月のことを「葉月」と表現するより、英語で「August」と表現する人のほうが多いと思います。
英語に精通することも大切ですが、コメを主食にしている日本人なら「葉月」の由来もぜひ理解していただきたいものです。
ところで英語の8月が「August」になる由来をご存知でしょうか?
ローマの皇帝アウグストゥスが自分の名前を付けたそうです。
ちなみに7月は「July」ですが、これはジュリアスシーザーの名前ですね。
日本人は本当に豊かな感性で吹く風や降る雨や雪、月の満ち欠けなどに素敵な名前を付けています。
しかし西洋の権力者つまり専制君主達は、その権力や財力に物を言わせ、自分の名前を月の呼び名として付けるなど自由奔放に振舞えたのでしょうか・・・。
日本と西洋では本当に対照的ですね。
そういえば歴史上の日本の権力者は質素な暮らしをして、自分の私腹を肥やすより、民百姓のことを真剣に考えていた人が多いと思います。
それはその暮らしぶりを見るとよく理解できますね。
「礼節の国」はこのようにして生まれたのかもしれませんね。
「和風月名」は旧暦(太陰太陽暦)の気候や祭事に合わせたものですが、残念ながら現代の季節感とは1か月から2か月のずれがあり、せっかくの素敵な名前が日常生活にマッチしません。
しかし和風月名になんとなく風情を感じるのは、日本人だからでしょうか。
「冠婚葬祭」や「年中行事のしきたりとマナー」に関する講演では、和風月名のお話をしますが、その意味や由来を理解することにより、一層親しみを感じる人が多いのはうれしい限りです。
あわただしい中にあっても、街路樹や山の木々の様子にも目を向け、自然の移ろいを感じるのもお勧めです。