マナーうんちく話535≪五風十雨≫
4月の事を「卯月」と呼びますが、これは卯の花が咲くから付けられた名前だそうです。
旧暦の4月は丁度今頃になります。
先日近所の山道を散策していると純白の卯の花が咲いていました。
《卯の花の匂う垣根に、時鳥(ほととぎす)早もきなきて、忍音漏らす 夏は来ぬ・・・》と詠まれた唱歌が思い浮かばれますが、実際に卯の花が咲いている傍で聞こえてきたのは夏を告げる時鳥の声ではなく、「春告げ鳥」のウグイスの鳴き声でした。
ウグイスも行く春を惜しんでいるのでしょう。
ところで卯の花は幹の中心が空洞になっているので「空木(うつぎ)」という名がついているのをご存知でしょうか?
卯の花は空木の「う」をとって「うのはな」になったそうですが、万葉の時代から多くの人々に親しまれてきた花です。
「夏雪草」や「雪見草」のように、小粒の白い花は雪に例えられますが、ある食べ物にも例えられています。
「おから」です。
おからのことを「卯の花」と言いますね。
純白の小さな花はまさに夏の到来を告げる花ですが、やがて散ってしまいます。
卯の花があたり一面散った姿は、まるでおからの様になるので、おからの事を卯の花と表現したそうです。
おからはご承知の通り、豆腐を作る時に出る副産物で、大豆の絞りかすです。
もともとは「から」と呼ばれていましたが、女性が「お」をつけて「おから」と呼んだので、今ではおからが一般的です。
このおからは料理を作るのにはとても重宝です。
洗う手間も、切る手間も不要です。
だから「きらず」という名前があるくらいです。
《包丁もいらず そのままきらず汁》という川柳が有ります。
江戸時代には庶民に広く愛されてきた豆腐やおから。
当時から身体によい食べ物であり、貴重な栄養源であったようです。
しかもお手頃価格。
従って需要が半端ではないので、江戸時代には豆腐屋が繁盛したようです。
時鳥や鶯の声は滅多気聞くことはできませんが、豆腐やおからは今も昔も変わらないところがいいですね。
納豆と共に後世に残したい日本の食べ物です。