マナーうんちく話1425《日本の「ホワイトデー」と「返礼文化」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

2月14日のバレンタインデーの贈り物のお返しとして、女性に贈り物をする日として誕生した「ホワイトデー」。

クッキーやキャンデイー等のお菓子を贈るのが一般的ですが、バレンタインデーの歴史に比べると非常に浅く、日本飴菓子業界により1980年頃に産まれた日本独特の習慣です。

「義理チョコ」が産まれたり「ホワイトデー」が産まれたり、なんだかんだと言っても日本人は贈り物をしたり、されたりするのが好きな国民だと思います。

物が豊かで平和ということもありますが、贈り物を通じ「思いやりの心」を発揮する日本人独特の国民性でしょうか・・・。

また「ホワイトデー」というネーミングもいいですね。
「幸運を呼ぶ」とか「縁起がいい」意味もあるとか・・・。

ではなぜホワイトデーが3月14日になったのでしょうか?
バレンタインデーのコラムでも触れましたが、3世紀のローマで王様が定めた恋愛禁止令にそむいた若いカップルをバレンタイン司祭が助けました。

しかしそのことが王の耳に入りバレンタイン司祭は処刑に処せられます。
多くの民衆はバレンタイン司祭を慕うわけですが、救われた若いカップル達が、改めて3月14日に永遠の愛を誓ったからという説が有ります。

ところでバレンタインデーは世界の多くで見られますが、ホワイトデーは日本独特の慣習のようです。
なぜでしょう・・・。

日本人独特の文化が出来上がった背景には、業者側の巧みな戦略も功を奏したと思いますが、それを熟成する根強い文化があったからだと考えます。

日本ではすでに中世後期には武家社会で「返礼の習慣」があったと言われています。婚礼、葬儀、病気見舞い、祝賀で贈り物を頂いたら、それに甘えてしまうと頭が上がらなくなるので「お返し」をする。

しかし折角頂いたわけですから、頂いた額に見合うお返しをしたら贈り主の好意を無駄にします。
だから半分程度のお返しをする習慣が出来ていたようです。

やがて一般庶民も、人から贈り物を頂いたら「返礼」として、その人に贈り物を贈りかえす「お返し」の文化が形成され現在に至っています。
そういえば「お移り」という素敵な言葉も存在します。

恐らく古いお家では「祝儀帳」や「不祝儀帳」もあるでしょう。
慶弔事で人から金銭を頂いたら、それを克明に記録して付き合いの参考にする帳面です。

また日本は古くから春分の日などの「ハレの日」には、食物を贈り合う習慣が有った国です。

このようにして贈答は日本の儀礼文化の核を成していくわけで、典型的な儀礼的行為だと思います。

そして贈り物をした方は「返礼の期待」が生じ、贈り物を頂いた側は「返礼の義務」が発生するわけです。

その習慣を上手に利用して「ホワイトデー」の文化を作った人は、本当に頭が良かったと思います。

そしてこの習慣が一旦根付けば、後は売り上げに大きく貢献するわけですから、毎年大きな話題として、ますます広がりをみせるわけです。

世界から見たら贈り物をしたり、お返しをしたりする不思議な文化に見えるかもしれませんが、単なる「物のやり取り」に終わらせないで、義理であっても何かのご縁だと思い、この縁を有効に生かしたいものです。

これを機会に心を通わせてみるのもお勧めです。

家庭や地域や職場における絆が希薄化し社会問題になっていますが、贈り物を通じ「無縁社会」を「有縁社会」にしたいものです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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