マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
春の訪れを謳歌する楽しいイベントがあちこちで開催されています。
中でも毎年恒例の「雛祭り」は艶やかで心がウキウキします。
ところでこのコラムでも何度も登場しましたが「五節句」をご存知でしょうか?
旧暦には四季の他に一年を24に分類した二十四節気がありますが、これよりもさらに大きく分けたのが「五節句」です。
節句は一年の節目に当たりますが、何もかも不安定になる時でもあります。
厳しい冬から暖かい春へと移行する時もしかりです。
ちなみに雛祭りは「桃の節句」とも言われ、五節句の一つである「上巳の節句」です。上巳とは3月最初の巳の日ですが、この時には大変不安定になり、そこに邪気がやってくるわけです。
かつて日本には不浄を嫌い、清浄を尊ぶ信仰が有りました。
他の宗教にもみられる傾向ですが、右を清浄として左を不浄とする考えもあります。だから右手で箸を持つことを教えられるわけですね。
ところで「穢れ」がやってきたらそれを祓わなければいけません。
むかしからある「禊(みそぎ)」の習慣もそうでしょう。
平安貴族の間では、穢れを払う為に稲や草や紙で人形を作り、それに穢れを乗り移させて、川に流していた習慣が有りました。「流し雛」です。
人形で身体を拭いた後、それに息を吹きかけると穢れがそれに乗り移ると信じられていたようで、それを川や海に流すのは当時としては最も合理的な方法であったと思います。
それが転じて、女の子が健やかに、身も心も美しく育つように願いを込めて、雛人形を飾るようになったとか・・・。
流し雛の習慣は江戸時代頃まで続いていたようですが、江戸時代になると、環境保全が厳しくなり、川に流すのをやめて、雛人形を飾るようになったと言われています。
どうせ飾るのなら、皇室の結婚式をモチーフにして「お殿様やお姫様の様に幸せになれますように」と願った当時の人々の気持ちが理解できます。
雛飾りは今流の表現で言えば、大変可愛いミニチュアの世界です。
もともと日本には昔から小さなものを楽しむ習慣が有ったのでしょうね。
世界に誇る「盆栽」もそうです。
雛祭りに飾る人形を「雛人形」といいますが、雛人形の「雛」は「小さい」とか「愛らしい」という意味です。
今まで雛人形のいきさつに触れましたがご理解いただけましたでしょうか?
では改めて質問です。
女の子が二人いる場合は、雛飾りはどうしますか?
次回に続きます。