マナーうんちく話535≪五風十雨≫
この冬最大級の冬将軍が居座っていますが1月20日は二十四節季の一つ「大寒」で、一年で最も寒い時期です。
また、寒稽古に励み、酒やみそを仕込む時期でもあります。
冬本番の低温と雪がしばらく続きそうです。
くれぐれもご自愛下さい。
甘酒でも飲んで身も心もホカホカ気分になるのもお勧めです。
ちなみに「甘酒」の季語は夏ですが、大寒の日は甘酒の日でもあります。
ところで最近は物が豊かで冬の娯楽も沢山ありますから、真冬といえそれほど生活に困ることはないようですが、その豊かさはここ数十年です。
つい半世紀前までは冬の暖房は囲炉裏や火鉢を囲むことも結構ありました。
ちなみに、火鉢を使用した経験をお持ちの方はご存知だと思いますが、火鉢の火は消さないように常に注意が必要です。
そこで直接火鉢に当たらない時には炭火を灰で覆います。
灰の中に入れてしまうわけですが、これを「埋火(うずみび)」といいます。
炭火には日本独特の風情や美しさ、そして先人の生活の知恵が感じられますが、埋火は冬の季語でもあります。
恐らく「埋火」という言葉をご存知の方はもはや少ないと思いますが、では「二十日正月(はつかしょうがつ)」は如何でしょうか?
正月料理を全て食べきってしまうので「骨正月」ともいいます。
飽食の今では考えにくいことですが、正月料理の魚の骨や頭なども捨てることなく全て食べきってしまう日です。
それだけ食べ物に対する感謝の思いが強かったということですね。
そしてこれで正月気分とも本格的に別れを告げます。
正月は日本人にとって最高の「ハレの日」ですが、二十日を境に本格的な「ケ」の日、つまり日常の勤勉な生活に戻るわけです。
大寒は一年で最も寒さが厳しい時でもありますが、同時にそろそろ梅の便りも聞こえて来る時でもあります。日差しが次第に長くなると共に、春へ向かう時期でもあります。
加えて、三日寒い日が続けばその後には四日暖かい日が続くと言われる「三寒四温」という言葉も聞こえて来ます。
「寒い日ばかりではなく、寒暖を繰り返しながら次第に春になっていく」わけですから、季節のまなざしをしっかり感じて下さいね。
冬の寒さが厳しいほど桜は暖かさに敏感になるそうです。
このような営みを知れば、人にも重ねたくなります。
厳寒の試練に耐えた人ほど、太陽の暖かさを感じることが出来るというものでしょう。
安穏の日がどれだけ大切なことか・・・。
苦労を多く味わえば味わうほど、感謝や思いやりの心が旺盛になり、笑顔の境涯になれるのではないでしょうか。
寒稽古は寒さが厳しいから効果が高まります。
「大寒」の時は色々と苦労に挑戦してみるのもいいですね。