マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
前回は月に対する日本人の思いに触れましたが、長い歴史の中でつくられた様々な物語の中にも「十五夜」を盛り込んだ素敵なシーンが多々あります。
心にしみる物語や恋物語などお馴染みの物語を順次渡り取り上げてみます。
美しい月を見上げながら思いをはせて頂ければ嬉しいです。
【十五夜とかぐや姫】竹取物語より
今は昔、竹取りの翁というものありけり・・・。
十五夜と言えばまず頭によぎる位、日本人なら誰も知っている「かぐや姫伝説」。
作者不明で、成立時期は諸説ありますが平安時代ということはまちがいなさそうです。
かぐや姫物語である「竹取物語」はわが国最古の物語とも言われていますが、この頃にこんな恋物語があったのかと思うくらいSFじみていて、なおかつロマンが漂っている気がしますが、如何でしょうか?
竹取の翁が竹の中から見つけて育てた、わずか3寸ばかりの小さな女の子は、3カ月で絶世の美女になります。
竹取物語には、そのかぐや姫の美しさの虜になった五人の貴公子たちが登場しかぐや姫に求愛しますが、本人にはその気が有りません。
そこで、それぞれの貴公子に対して難題を出して見事振り切りますが、今度は時の帝(みかど)から想われるようになります。
日本の最高権力者からの求愛と言えば簡単には降り切れませんが、これも短歌などでコミュニケーションをとりながらも振り切ります。
しかし十五夜になれば月に帰らなければなりませんので、悲しみに明け暮れるようになります。
これを知った翁は帝にこの事を打ち明け、月からの使者を迎え撃つようお願いし数千人もの兵を配置して迎え撃とうとしますが、使者の力にはかないません。
かぐや姫は月の衣を着せられると、今までのことは全て忘れてしまい、天に昇って行ってしまいました。
五人の貴族と帝さえも振り切ったかぐや姫は、やがて誰の手にも届かぬ月に帰ってしまいました。
お姫様のいなくなった地上は輝きを失ってしまうわけですが、この竹取物語は日本人の心に深く根差した、何かが存在するのではと思います。
ちなみに日本の象徴である「富士山」の由来はかぐや姫物語からきているとか。
そういえば童謡にも「十五夜お月さん」がありますが、この曲も物悲しそうな雰囲気が漂いますね。
現在と異なり昔は皆貧しかったから、貧しいがゆえに幼いころから里子や奉公に出されたり、結婚をしいれられたりしたのでしょうか?
お月様の美しさとは裏腹に胸が使えるような気持ちになりますね。