マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
鰻丼は、丼に入れたご飯の上に鰻の蒲焼を載せた丼物で、一年を通じ食すことが出来ます。
もともと江戸の郷土料理とされていますが、この料理を考えたのは江戸時代の大久保今助という芝居の経営者だと言われています。
今から約200年前のお話です。
ある日川岸の茶店で鰻の蒲焼を食べていましたが、渡し船が出ることになりました。今輔はまだ食べている途中だったので、慌てて丼ご飯の上に鰻の蒲焼を載せて、その皿を蓋代わりにして船に乗りました。
しばらくして船が対岸に着いたので改めてその鰻の蒲焼を食べたら、それが何と今まで食べたことが無いほど美味しくなっていたとか・・・。
今輔は元々大の鰻好きで、この味をなんとか芝居小屋で商いできないものかとさらに研究を重ね、丼の中に熱々のご飯を盛り、その上に焼きたての鰻を載せ、タレをかけて売り出したら、これが大受けして現在に至っているようです。
もともと江戸の人は大変なグルメだったようです。そこに濃い口醤油が発明され食文化が大きく花開くわけですが、商売もとても上手だったようです。
鰻の蒲焼の魅力は何と言ってもタレの香ばしさでしょう。
醤油とみりんや砂糖などを加えて煮つめ、さらに一定の期間寝かせて使いますが、まさにその店、その店の伝統の味です。
そして薬味は粉山椒です。鰻の油こさと匂いを中和させ、旨さを引き立ててくれます。
これだけ手間暇をかけて作られた鰻丼ですので、食べ方には気おつけたいものです。最初から山椒をかけないで、先ずはそのまま食し本来の味を見極めて、改めて山椒をかけて食べるのがポイントです。
加えて左側から、蒲焼とご飯を一緒に、または交互にリズミカルに食べて下さいね。また丼は持てるようでしたら持って食べるのが基本です。
持ちにくいようでしたら、左手を丼に軽く添えると良いでしょう。
1人でもがつがつ食べないで、丁寧に食べて下さいね。
さらにお客様に出す場合は「割りばし」を添えて下さい。
鰻丼には敬意を添えて割りばしということになります。
何事にも清潔好きの日本人に割りばしは大変マッチしているということです。
次回はさらに格上の「鰻重」についてです。