まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
日本人の桜好きは今も昔も変わることなく、花の中でも特別な位置を占めています。また、公式には国花ではありませんが、同等な扱いではないでしょうか。
4月に開催される入学式では、桜の花が華やかに演出してくれますね。
しかし今では花見と言えば「桜」ですが、奈良時代までは花見と言えば「梅」をさしていたようです。
このことは万葉集に登場する花の数からみても容易に想像できます。
例えば万葉集で一番多く謳われている花は「萩」ですが、梅は2番目に多く118です。ちなみに桜は44に過ぎません。
これが逆転したのが平安時代に入ってからだそうです。
《ひさかたの 光のどけき春の日に しづ心なく 花ぞちるらむ》(紀友則)
多くの人が知っている有名な歌ですが、これにうたわれている花は桜だそうです。
また日本人は桜木を愛し、散る際の儚さや潔さに重きを置きますが、西洋人は全く価値観が異なります。
桜は英語で「cherry blossom」といわれるように、西洋では花を愛でると言うより「さくらんぼう」の成る木として重宝されるようですね。
そして桜には、神道・仏教を信仰し、米を主食にしている日本人にとってとてもなじみの深い神様が宿っています。
サクラとは春になって里にやってくる稲の神「サ」が宿る「クラ」と言う意味です。
つまり桜は、早い話し「穀物の神」が宿っているわけで、稲作の神事と非常に密接な関係があります。
桜の開花は、農業の開始の大切な指標になっていたということです。
桜の開花に合わせて稲を植える時期を計算し、桜の花の散り具合によって豊作を占っていたわけですね。
生きることは今も昔も「食べること」ですが、当時は穀物の出来不出来は直接命にかかわる重大事です。
だから人々は桜の咲く時期になれば、穀物の神が宿ると言われている山の桜の木の下でご馳走を食べるわけです。
勿論「穀物の神」と一緒に食べます。いわゆる「神人共食」です。
そして「山の神」を麓までお連れして、今度は「田の神」になって頂き、これから始まる田植えが無事行われるよう祈願するわけです。
このような物語が花見には存在するので、出来れば花見は「米の料理」と「日本酒」にして頂きたいものです。
「花見」が焼き肉にカラオケでは、田の神に申し訳なく思うわけですが、如何でしょうか・・・。