マナーうんちく話90≪懐紙の優雅な使い方≫
立春を過ぎたら春の気配があちらこちらから感じられるようになります。
昔の人は陰陽五行の思想に基づき「春は東からやってくる」と考えていましたので、「東風」は春を呼ぶ風になるわけですね。
そしてこれから次第に、梅の花を一輪一輪と咲かせてくれます。
さらに池や沼に張った氷をも溶かしてくれます。
ところで、一足早く春を告げる食べ物と言えば、何が浮かんできますか?
春を告げる魚として有名な魚は、民謡にも登場する鰊(にしん)を思い浮かべる人も多いと思いますが、産卵のため春になると北海道に大軍がやってきました。その卵が「カズノコ」で子孫繁栄の縁起物です。
加えて、寒い地域の風物詩になっていますが、氷に穴を開けて釣る「ワカサギ」も有名で、「公魚」と表現されるのは、江戸時代に将軍に献上されていたからだと言われています。
間もなく鶯の声とともに「魚上氷(うおこおりをいずる)」頃になります。水が暖かくなり氷が割れ始め、氷の下でおとなしくしていた魚が、春の到来を察して元気に活躍し始めます。
「春になれば 氷こも解けて どじょっこだの ふなっこだの 夜が明けたと思うべな・・・」という歌がありましたね。
魚にとっても夜明けがやってくるということでしょうか・・・。
では、春を真っ先に告げる「山菜」と言えば、何が思い浮かびますでしょうか?
料亭などで一足早く口にした人も多いと思いますが「蕗の薹」です。
独特の苦みが、香りと共に和食の魅力を引き立ててくれる若い芽です。
凍った土や雪の下から、萌えだす芽には素晴らしいエネルギーが漲っています。
だからそれを食すことにより、冬の間衰えた体力を回復し、若返りを図ろうと言うことで、昔からとても重宝された食べ物です。
漢方の世界でも、「春は積極的に苦みを盛れ」と言われますが、蕗の薹はまさに理想の食材ではないでしょうか。
無病息災や食欲増進に多大な効果が期待できると信じられていたのも頷けます。
華が咲かない固めのつぼみがお勧めで、天婦羅が美味しいと思いますが食べ方は好きずきです。
江戸時代には茹でて串に刺して「さんしょうみそ」をつけてたべたとか・・・。
試してみる価値はありそうですね。
蕗の薹に続き、これから筑紫、ワラビ、タラの芽、ウド等苦味を持った山菜が一斉に旬を迎えます。
冬眠から覚めた動物も、目覚めの時に一番に食べるのが苦味の山菜だそうです。
先人も動物も経験的に、今何が大切かしっかり把握していたのでしょうね。
その知恵は見習いたいものです。