マナーうんちく話1143《ビクトリア女王とフィンガーボールに込められたマナーの神髄》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:洋食のテーブルマナー

テレビ番組などの「マナークイズ」で、次のうち正しいマナーはどれでしょう?と問いかけるシーンを見て、首をかしげることが多々あります。

マナーとは「感謝」「尊敬」「おもいやり」の心を抱き、それを言葉や態度や文字で具体的に表現することです。

しかし表現の仕方は実に多種多様です。
その国々や地域の文化・食文化・気候・風土・国民性・歴史・宗教等によりまちまちです。
さらに時代と共に変わる不易流行的側面を有しています。

つまり、マナーは化学や数学の答えの様な訳にはいかないと言うことです。
正解はその人、その場次第というケースも多々あります。

前回洋食に使用する「フィンガーボール」に触れましたが、これにまつわるイギリスのビクトリア女王の有名な逸話を紹介しておきます。

ビクトリア女王と言えば1800年代に活躍した大英帝国を象徴する女王として有名ですが、その治世は「ビクトリア朝」と呼ばれ、政治・経済・文化・技術面等で大変優れた成果をあげていますね。

当時、西洋諸国では王侯貴族が晩さん会を繰り広げていたわけですが、ある日ビクトリア女王が晩さん会に招待したお客様が、フィンガーボールの使い方が解らずにその中の水を飲んでしまいました。

そのような席に招待されるお客様ですから、ある国の貴族だったのではと思いますが、それを見たビクトリア女王は、そのお客様にハジをかかせてはいけないと思い、フィンガーボールの水は「汚れた指先を洗うもの」と理解しているにもかかわらず、自らもその水を飲んだという逸話です。

フィンガーボールの水を飲み干すという行為は、形式上ではマナーに反するかもしれませんが、彼女がそうしたお陰で、そのお客様は笑い者にならず、終始楽しく食事が出来たと言うことです。

マナーはルールではありません。
加えて、形式ばかり重んじるものでもありません。
最終的には、その人の心です。

ビジネスマナーで、敬語の使い方がよく問われますが、敬語もどんな人に、如何なる場合において、どのような言葉の敬語を用いるか?
専門家でも難しいのではないでしょうか。

また、不必要に敬語ばかり使えば距離を広げてしまうこともあります。
その人に合わすべきでしょう。

接客もそうです。
あくまでその人に合わせ、臨機応変が良いでしょう。

マニュアルに沿った接客、臨機応変な接客、それぞれ長所短所がありますが、感動を呼ぶ接客は、その人に合わせた臨機応変な接客でしょう。

一長一短では難しいので、形を覚えるより「人間力」を磨くことをお勧めします。ビクトリア女王のケースは稀だとしても、人間力を磨けば臨機応変に対応できます。

立ち居振る舞いにせよ、言葉遣いにせよ、「形より心」で、これがマナーの真髄ではないかと思うわけですが、如何でしょうか・・・。
但し、基本は大切です。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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