マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
2016年の睦月も半分過ぎました。
時がたつのが年々早くなる気がしますが、如何でしょうか?
ところで1月15日、厳密には1月14日から16日までを「小正月」、あるいは「女正月」と言いますが、ご存知でしょうか。
元日を中心にした正月を「大正月」とか「男正月」と言いますが、「小正月」「女正月」はこれに対してつけられた名前です。
前者はこのコラムでも何度も触れましたが、歳神様をお迎えしておもてなしする行事で、後者の「小正月」は豊作を祈願する行事です。
そしてもう一つ大切なことは、歳末から正月にかけて、ご馳走を作り、お客様の接待で何かと多忙を極めた女性をねぎらう日でもあります。
だから「女正月」と呼ばれるわけですね。
男女共同参画社会の進展や男女平等が叫ばれる現在ですが、この女性をねぎらう「女正月」は、暦から消えてしまいました。
何かおかしい気がしませんか?
「セクハラ」「マタハラ」対策等が課題になる中、本来は男性が家事を一切行い、女性にくつろいでいただく日だった「小正月」の行事が消えるのも、さびしい気がしますね。
前回、冠婚葬祭の本質を正しく認識する必要性に触れましたが、この例は、まさにそうではないでしょうか?
そこで、小正月は小豆粥を食べる日でもありますから、男性が小豆粥を作って女性に振舞うのもお勧めです。
昔の日本は、西洋の「レディーファースト文化」に対し、「男性優位」の社会であったようですが、不必要に威張っていたのではなく、女性に対しては優しい社会であった面も多々あるのではないかと思います。
「女正月」の行事もそうですが、江戸しぐさには「女しぐさ・男しぐさ」があり、かなり女性に思いやりの心が発揮されていたようです。
例えば、町内で会合がある時には集会所に男女が集まります。
その際、履物を脱いで部屋に上がるわけですが、男性がいくら早く来ても履物は、上り口から1尺位(約30㎝)空けて脱ぎます。
男性はまたいででも上がれますが、女性に対してそのような仕草はさせないように、あえて女性のスペースを開けたわけです。
今の用にパンツルックではなく、当時の女性は着物ですから、男性は着物の女性に配慮したと言うことです。
加えて、女性は「子供を産んで育てる」という非常に大切な役割があるので、何かと女性に対して敬意を払い心配りをしていたのですね。
さらに、女性ならではの感覚や家事能力等も尊重されていたようです。
良い意味において、身体の構造の違いを尊重し、女らしさや男らしさを大切にしていたのではないでしょうか。
男性の家事負担が話題になっていますが、現実には難しいケースも多々あります。しかし、精神的に女性を支えることは可能です。
「女正月」や「江戸しぐさ」の考えは、とても参考になると思うのですが、このような文化は絶やしたくないですね・・・。