マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
「秋の夕暮れはつるべ落とし」と表現されますが、めっきり日暮れが早くなり、寒気が増してきましたね。
これからは天気の移り変わりも激しく、寒さが日毎に増してくるわけですが、こうなると今までの露が冷気で冷え込み「霜」になります。
10月24日は二十四節季の一つ「霜降」です。
秋が深まり、霜が降りて来る頃とされています。
勿論旧暦の話ですから、実際に霜が降りて来るのは、まだ先です。
私が住んでいる「晴れの国」岡山では、例年だと、ひと月以上先のことです。
しかし油断大敵です。
農作業にとって霜は大敵です。
従って冷え込みが厳しい日には霜に要注意で、天気予報から目が離せません。
霜が降りるまでは夏野菜のナスビやピーマンは収穫できますが、霜にあたれば、殆どの野菜や花がやられてしまいます。
今では温室栽培方法も確立されていますが、昔は想像以上に大変なことだったと思います。
「生きることは食べること」ですが、その食べ物が霜により大打撃を受けるわけですから・・・。
だから二十四節季に、「霜降」という節目を設けて注意を促したのでしょうね。
しかし、先人はこの霜に恐れていただけではありません。
野菜や花に大打撃を与える霜も、細かく観察し素敵な名前をつけて、その風流を楽しんでいたわけです。
外国人のように、虫の鳴き声を単なる音として聞くのではなく、それぞれの虫の声として聞く耳を持ち、「虫聞き」と言う文化まで築いた日本人です。
霜の美しさを見事に映し出し「霜の花」と表現しました。
雪の表情にも色々な名前をつけて楽しみましたが、霜にまで名前を付けるとはすごいですね。
また「霜の花」は「三つの花」とも言われます。
ちなみに雪は「六つの花」と言われます。
「三つの花」は雪の「六つの花」に対してつけられた名前で、季語は晩秋です。
その年の晩秋から秋にかけて、初めて降りる霜の事を「初霜」と呼びますが、冷え込みが強い朝には是非注意して観察してみて下さい。
そして、霜が降り始めたら紅葉の季節です。
春は、「山笑う頃」と表現されますが、紅葉の季節は、赤や黄色に色づいた葉っぱがお化粧するので「山彩る頃」と表現されます。
季節に合わせ、山の表情にまで風流な言葉で表現した、日本人の感性は実に見事です。
昔の建物は、霜や雪や雨の降り具合、風の吹き方等々、自然の在り様を緻密に観察し、それらに逆らうことなく上手に工夫して作られています。
だから何百年も美しい状態が保たれているのではないでしょうか?
今回、一流と呼ばれる企業が建てて販売したマンションやゴム製品にデーターの改ざんが発覚し、大きな問題になっています。
和食が無形文化遺産に登録された頃には、やはり一流と言われる百貨店やホテルにおいて、食品偽装表示が話題になりました。
売り上げ至上主義は、自然も人の心も蝕んでしまいますね。
せめて季節の節目くらいは、自然に触れ、自然を大切にするよう、一人ひとりが心掛けたいものです。そうすることにより思いやりの心が目覚めてきます。
また、時節の挨拶や朝礼などにおいて、季節の言葉を取り入れてみるのもお勧めです。