マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
お世辞を言う人をどう思いますか?
「お世辞を言う必要ない」、あるいは「お世辞を言う人を軽蔑する」と言う人も多いと思います。
しかし、「こんな時くらいはお世辞の一つや二つは言えたらいいの」に、と思う人も結構います。
「お世辞」と「称賛」の違いは、それを言った事により、代償を求めるか否かです。
しかし、「お世辞」と「称賛」の線引きは、非常に難しいのが現実です。
真心こめて褒めたつもりでも、相手からは軽いお世辞にとられることも多々あります。これでは気持ちが正確に伝わりませんね。
日本人は欧米人に比べいいところは沢山ありますが、情感を込めて人を褒めたり、感謝の気持ちを表現することは、あまり得意ではないようです。
それどころか、メール全盛になったせいか、話し方がそっけない人が益々増加傾向にあるような気がします。
つまり、中身はキチンと伝えても、感情までは伝わらないということです。
お世辞になるか、称賛になるかは、長い間培われたその人の人柄によるところが多いと思います。
また、サラリーマンだったら出世の道具として、お世辞を堂々と言う人も多いと思います。
接客の時もしかりです。
一方、「称賛」は見返りを求めない純粋な行為です。
そして、褒めるタイミングは、間髪いれず、具体的に、相手の目を見てですが、これがまた難しいわけです。
いざという時に、適当な褒め言葉が浮かんでこない人が多いようですね。
どうしたらいいのでしょうか?
先ずは、心を豊かにして下さい。
加えて、相手を察する思いやりの気持ちを持つことです。
お世辞も、称賛も、相手を心地よくさせると言う点では、言えないより言えた方が良いと思います。
心を豊かにすれば、まず態度が違ってきます。
積極的な態度になれば、不思議な事に、自然に言葉が湧いてきます。
たとえ言えなくても、笑顔になり、その人の前に進み出るくらいの前向きの態度を示して下さいね。
その真剣な態度は、他のどんな上手なお世辞や称賛より、相手の心に響きます。
ちなみに、心を豊かにすることは、人柄を磨くことです。
小手先のお世辞や称賛のテクニックより、自分を磨くことをお勧めします。
以前このコラムで「江戸しぐさ」を取り上げましたが、江戸しぐさでは、お世辞が言えて初めて一人前の大人になれます。
「三つ心 六つ躾 九つ言葉 十二文 十五理で末決まる」と言う江戸しぐさは、当時の子どもの段階的養育法を説いたものです。
3歳までは子に精一杯愛情を注ぎ、6歳までには箸使いなどの基本的な躾を施し、九歳になるまでに大人としての挨拶がきちんとできて、お世辞が言え、人付き合いが上手に出来るようになると言うことで、良好な人間関係を築く処方箋のようなものです。
かなりレベルが高いと感じますが如何でしょうか?