マナーうんちく話1009《「鰻丼」の知識と美しい食べ方》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

今はフルシーズン食すことが出来ますが、かつて夏のご馳走と言えば「鰻料理」ではないでしょうか?

鰻はビタミンAとビタミンDが豊富で、夏バテ対策として、また精の付く食べ物として万葉のころから食されていましたが、「蒲焼」といわれる調理方法が登場するのは江戸時代からです。

江戸中期になると、濃い口しょうゆが発明され、その普及に合わせて蒲焼も広く庶民に広まったようです。

そして、器の中にご飯を入れて、鰻のかば焼きを載せて、その上から蒲焼き用のタレをかけた日本料理が「鰻丼」「鰻重」で、平賀源内の傑作のキャッチコピーのお陰で、7月24日土用の丑の日には、食べずにはいられない食べ物になりました。

但し、当初は鰻の蒲焼きとご飯は別々に食されており、鰻丼が登場するのは大部の後です。

いきさつは下記の通りです。
昔は今のように大きな川に橋はなく、渡し船での移動だったわけですが、その渡し船を利用するため、船着き場近くの茶店で、鰻の蒲焼とご飯を食べていた旅人がいました。

食べている途中で船が出ることになったので、慌てた旅人は温かいご飯の上に蒲焼きを載せ、その皿を蓋にして船に乗り、暫くしてそれを食べたところ、非常においしかったので、それが定着しました。

特に江戸時代には、芝居が娯楽として人気があったわけですが、鰻丼は幕の内弁当のように、芝居にとても適した食べ物だったのでさらに普及したようです。

さらに明治から大正になると、鰻丼にさらにぜいたく感を出したいということで、漆器等をふんだんに使用した重箱に鰻を入れるようになり、新たに「鰻重」が誕生したわけです。

ところで、鰻の蒲焼も、丼で供されるか、重箱になるかで、値段は大きく異なりますが、中身自体は必ずしも異なるわけではありません。

ちなみに、鰻の一番美味しくてボリュームのある部分は胴体部分ですが、小骨が多い頭の部分や、幅が狭く身も薄い尾っぽの部分では、値段が異なるかもしれませんね。

しかし、「鰻丼」の方が庶民的で食べ易い感じがしますが、「鰻重」と言えば、たとえ中身が同じでも、なんだか格式ばった感じが歪めないようです。

その理由は、丼より重箱の方が、格式が高いとされているからだと思います。
いずれにせよ、高級料理ですからフォーマルな席でも供されます。
美しく、美味しく食べたいものですね。

先ず、鰻のかば焼きは、牛肉のステーキなどと同じで、注文を受けて焼き始めることが多いので、時間にゆとりを持って下さい。

焼き上がるまでの時間、良い香りを楽しみながら、ひたすら待つことも大切なマナーですから、香りを楽しむ余裕が大切です。

【鰻丼の美しい食べ方】

丼物は気軽に食べられますが、鰻丼もれっきりとした和食です。
たとえ一人で食べる場合でも、姿勢を正し、丁寧に召し上がって下さい。

丼が持てそうな場合は持って食べて下さい。ご飯と鰻を交互、あるいは一緒に食べてもいいでしょう。
丼の左手前から食べ始めるのがポイントです。

丼が持てないようでしたら、左手を丼に軽く添えると上品な食べ方になります。
但し、丼に口をつけて食べるのは感心しません。

丼に直接口をつけてもいいのは、「お茶漬け」や「とろろごはん」のように、箸だけではつまみにくい食べ物だけです。

次回は「蒲焼の知識」と「鰻重」の品の良い食べ方です。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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