マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
「清流の女王」と呼ばれる鮎が食卓にお目見えする頃です。
鮎は川や海を回遊し、鰻と共に日本人には大変愛されてきた魚で、代表的な川魚釣りの対象になる魚です。
だから季節毎に、色々な名前がついています。
春に川を上ってくるアユは「若鮎」「登り鮎」、秋になって川を下るアユは「落ち鮎」「下り鮎」と読んでいました。
旬を大切にして、野菜や魚などの素材の持ち味を大切にした江戸っ子は鮎の呼び方を、季節毎に使い分けて、それぞれの味を堪能していたようです。
それ以外にも様々な呼び名があるのも鮎の特徴ですが、それだけなじみの深い魚だと言うことですね。
普通に鮎と言えば夏の季語になり、最も華々しく活動する時期も夏で、主食として苔を食べます。
だから香りが良いので「香魚」という呼び名もあります。
そして水の中で見ると良く解りますが、泳いでいる鮎は口が銀色に光ります。
「銀口魚」と呼ばれる所以です。
まだあります。
約一年で寿命が尽きるので「年魚」とも呼ばれます。
秋に誕生し、冬になると海の生活になりプランクトンなどを食べます。
川魚ですが海水にも適応できるわけで、春になると川に戻って来て、夏には大きく成長します。
ところで、鮎は魚編に「占」と書きますが、これには諸説あります。
鮎の友釣りをされる人は良くご存知だと思いますが、鮎は縄張りを作り場所を独占するので「占」の字があてられたと言う説があります。
自分の近くに別の鮎がやってくると、縄張り意識を発揮し、体当たりして縄張りを守るわけで、この習性を上手に利用したのが「友釣り」です。
そして古事記や日本書紀の話ですが、神功天皇が鮎で戦いを占った説があります。
このように鮎はかなり古くから文献にも登場し、朝廷への献上品でもありました。貴族や武士に愛され、日本の食文化の中でも大切な位置付けだったわけですね。
加えて「鵜飼」等と言われる、非常に長い伝統漁法も受け継がれる等、世界屈指の文化を築いていると言えます。
ところで鮎の食べ方ですが、殆どの魚は刺身がお勧めですが、鮎は何と言っても「塩焼き」がいいですね。
新鮮な鮎に塩をふり、少し焦げ目がつく位に焼いて頭からどうぞ。
姿・形・味・気品の揃った新鮮な鮎を丸かじりする、何とも言えない夏の味覚です。但し、料亭など格式ばった場所では「マナーうんちく話561《鮎の塩焼きの正しい?食べ方》」を参考にして下さい。
鮎の塩焼きの定番でもある「たで酢」で食すと美味です。
「たで」といえば、「たで喰う虫も好き好き」という諺があります。
辛くて渋いたでの葉をこのんで食べる虫もいるように、人の好みも10人10色で、それぞれ違いがあると言うことです。
清流を好むアユもいれば、少し濁った水を好むナマズもいます。
見方や感じ方も人それぞれですが、大切な事は、それぞれの特性をよく理解することです。
鮎として生まれたら、鮎として生まれた意味を正しく理解し、鮎としての一生を全うすることではないでしょうか?