マナーうんちく話535≪五風十雨≫
正月には縁起物がつきものですが、お節料理以外にも沢山あります。
中でも江戸時代は、正月のご馳走として不可欠だったのは「お雑煮」です。
予算の関係で、お節料理やお屠蘇まではできなくても、雑煮だけは家族で食べて、正月気分に浸ったようです。
江戸時代の川柳に「雑煮たく 煙も江戸の 春霞」というのがありますが、山陽新聞の「さん太アンケート」によると、雑煮を食べる人の割合は93,7%でした。昔も今も正月は雑煮がお似合いですね。
この他、「伊勢エビ」は海の幸を代表するご馳走ですが、古くから鯛と共に儀式や祝宴、正月に供されてきました。
その理由は、伊勢海老は「ひげ」が長いので、これを長寿の象徴と見立てたわけで大変縁起物です。
「ユリ根」もよく出てきますが、ほんのりした触感は格別ですね。
ユリ根と言われる位ですから山ユリの根ですが花を咲かせるユリの根を食べる食文化はあまりありません。
滋養強壮としても貴重な食べ物です。
「屠蘇」は邪気を払い、一年の無病息災を祈念しますが、飲む順番は子どもの未来にあやかりたいとの願いからです。但し、長寿の人がいればそれにあやかっても良いでしょう
「鏡餅」は里帰りされた歳神様が宿る所です。
鏡は神事には不可欠で、昔は神そのものでした。
だから、鏡に見立てた餅を「鏡餅」と言い、長寿のシンボルにしたわけですね。
「橙」は家が代々続くように、「昆布」は喜び事に恵まれますようにとの語呂合わせです。
大きな餅や橙や昆布がない場合は餅にミカンを載せるだけでもかまいません。
鏡餅に一年の幸福を願って家族で食べたので、正月に餅を食べるようになりましたが、今でも年中行事には「餅」がつきものですね。
そして、お節料理やお雑煮を食べる時には「祝い箸」を使用します
これは柳の白木で作られる場合が多いにですが、柳はとても丈夫なので縁起が良いとされるからです。
さらに雪が降っても、柔軟に対応できるので、謙虚な姿勢を表すとも言われています。
両方が尖っているのは片方をとり箸にするためではありません。
歳神様と共に食するわけですが、一方で神様が、一方で人が食べる「神人共食箸」を意味します
ユネスコが和食を無形文化遺産に登録した理由は、このような豊かな精神文化にもあります。
正月料理の豊かな物語を堪能して頂くと共に、日本の素晴らしさをぜひ実感して下さいね。
そして、「お正月のご馳走」は、神様と共にするものですから、食べ方もとても大切です。
つまり、お節料理やお雑煮を頂く時には最高のテーブルマナーを発揮して下さいね。
感謝の気持ちで、姿勢を正し、美しい箸使いで、美味しく、楽しく味わって下さい。
子どもにこのように教えることでストレス教育にもなりますし、将来思いやりのある大人に成長します。
一年の始まりは何かと大切ですが、特に食べ方を大切にすれば、生活そのものを大切にすることができ、ハッピーに繋がります。