マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
日毎に夜が長くなり、気温が低くなってくると、夜の街が一段と活気づいてきます。
神様(神道)・仏様(仏教)の国である日本が、キリスト教国より早くから、盛大にクリスマスイベントを繰り広げているのは、考えてみればおかしな話ですが、それだけ日本が豊かで、商魂たくましく、外国の文化をおおらかな気持ちで受け入れているからでしょうか?
また、クリスマスプレゼントを通じ、互いに思いやりの心を発揮しあう、優しい国民性を有するからでしょうか?
寒風吹きぬける夜に、コートの襟を立て、ポケットに手を入れて眺めるクリスマスイルミネーションは、平和のありがたさや、人の温もりを表しているようです。
ちなみに、イルミネーションは照明を意味する言葉で、船舶や建物の外側に電球を付けて装飾することでしたが、現在はクリスマスツリーを始め、街路樹や鉄塔などにも多彩に使用されるようになりました。
そして、クリスマスは、もとはヨーロッパの原始宗教の「冬至のお祭り」という説がありますが、当時の人は、夜が長くなることと、太陽のパワーが弱くなることに関連があると考え、その復活を祈念したようですね。
クリスマスツリーに「樅の木」が使用されるのは諸説ありますが、常に緑を絶やさない樅の木に、そのような願いを込めたかもしれません。
加えて、自然の恵みがいつまでも続く事を願ってクリスマスケーキを頂き、闇を照らすローソクに光溢れる生活を託したのでしょうか。
ところで、日本の正月は、歳神様の里帰りの際の依り代になるように「松」の木で門松を作りますが、松も樅の木と同じく一年中緑を保っている常緑樹です。
また、日本の歳神様は五穀豊穣をもたらしてくれます。
加えて、日本でも冬至は、一年の中でもどん底の日で、これを一年のスタートと捉えた時代もあります。
だから、冬至には、柚子の臭いでけがれを清めるために柚子湯に入り、幸福が舞い込むように「ん」の字のつく「かぼちゃを」たべるのでしょうね。
今、昔とは比較にならない位にモノが豊かで便利になりました。
しかし、世界に戦争が絶えることは有りません。
いつの世も、宗教の違いが戦争の大きな原因となっているのは歴史が示す通りですが、なんとかならないものでしょうか。
冬至に関する気持ちは、日本もヨーロッパも同じで、国境や宗教の違いは見られません。
ノーベル平和賞を受賞したパキスタン人のマララ・ユスフザイさんは、「肌の色、言語、信仰する宗教は問題ではありません。互いに人間として尊重し、尊敬しあうべきです。」と語っています。
17歳の女性から教えられることが多々ありますね。
クリスマスイベントをどこの国より盛大に謳歌できることは大変ありがたいことです。感謝の限りです。
ただ「礼節の国」日本としては、単にこれを喜ぶばかりでなく、日本古来の礼儀作法を通じ世界の平和に少しでも貢献したいものです。
平和で自然と共生してきた社会環境の中で誕生した、日本の礼儀作法は、「思いやりの心」「おもてなしの心」を具体的に表現したものに他なりません。
加えて、「思いやりの心」「おもてなしの心」は正月行事を始め、多彩な年中行事の中で長い時間をかけて育まれてきました。
だから、正月を始めとする年中行事の意味や意義を正しく理解し、国際化の進展と共に、世界に向けて発信することが大切であると痛感します。
マララさんの会見に感銘を受けましたので、来年も益々頑張って参りたいと思っております。