まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
秋は空気が澄んで空が高く見え、好天に恵まれて草も良く育ちます。
そして、その草を腹いっぱい食べた馬も肥えてきます。
清々しい実りの秋を迎え、「天高く馬肥ゆる」頃になりました。
あちらこちらで稲刈りがピークを迎え新米を始め、木の子、果物等、旬の美味しいものが市場に勢ぞろいしているので、「食欲の秋」「グルメの秋」を謳歌している人も多いと思います。
ところで、日本には冬も春も夏も旬の食べ物は沢山あるのに、何故秋だけが「食欲の秋」「味覚の秋」「グルメの秋」等と特別視されるのでしょうか?
諸説あります。
○今のように温室栽培が無かった昔は、秋が一番沢山の食べ物が採れるから。
そういえば秋の語源は「穀物等が収穫の季節を迎え食べ物が飽きるほど出回るから」と言う説があります。
○自然界では冬になると食べ物が少なくなるので、厳しい冬に備えて、栄養をしっかり蓄えておく必要があるから。
○夏に衰えた体力が復活し、食欲が旺盛になるから。
○寒くなると体温が下がるので、その体温を調整するためにしっかり食べる必要があるから。つまり、寒くなると食欲が増すと言うことです。
茶席で供される「懐石料理」の語源は、一日に二度しか食事がとれない修行僧が、空腹を和らげるために、暖めた石を懐に入れたからという説があります。
○秋になると日照時間が減少するので、精神の安定を保つセロトニンという物質の分泌が少なくなるので、その分泌を促進するために食欲が増すから。
○秋はスポーツ等と共に、食に関するイベントが多く開催されるから。
等の理由があるようです。
ちなみに「旬」は10日間の意味です。
今でも一月を上旬・中旬・下旬の3つに分類していますね。
昔天皇が、季節が変わる時に政治に対する意見を聞く「旬政」・「旬儀(しゅんのぎ)」という儀式が行われ、この際、季節の食べ物が支給されたことから、「旬」という漢字が現在のように使われるようになったそうです。
ところで、草を腹いっぱい食べて肥えた馬はどうなるのかと言えば、実はこの馬に乗って盗賊が村に攻めてくるわけです。
従って「天高く馬肥ゆる秋」は、「空気が澄み、空が晴れ渡り、実りによって馬が肥える」という平和でのどかな秋の風情を表現した言葉ですが、一方では、「実りの秋、収穫の秋になったら、肥えた馬に乗って盗賊が攻めて来るから警戒しなさいよ」と言う意味もあります。
世界屈指の飽食の国日本では、年中美味しいものに恵まれているのであまりピンときませんが、「生きることは食べること」ですから、美味しいものを食べる時には感謝の心で頂きたいものですね。
そして「食欲の秋」という言葉は、四季の移り変わりを楽しむ日本人ならではの感性ではないでしょうか?