マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
百花繚乱の四月も終わりの頃になると「牡丹の花」が咲き誇ります。
いよいよ真打登場です。
真打とは、最も高位で、最高の力量を持つ者に与えられる称号です。
華やかで美しい事を華麗と表現しますが、その表現がぴったりの牡丹の花は、昔は大変人気を誇った花で、「百花の王」とか「富貴草」「富貴花」「花神」など、その美しさを称える名前が沢山付けられています。
牡丹の「牡」は「雄」を表し、「丹」は「赤」を表す漢字ですから、強烈な赤を連想させる花ですが、白や紫も有ります。
旬は4月から5月で、比較的長い期間、王者の風格を漂わせながら見事に咲き誇る姿は、まさに真打ですね。
咲きしより 散りはつるまで 見しほどの
花のもとにて 20日へりけり (藤原忠道)
花が咲いてから散るまで眺めていたら20日過ぎた。
それくらい人を魅了する美しい花ですね。
だから牡丹の花は、紋章にも良く使用されています。
ところで、「梅には鶯」が、「紅葉には鹿」が良くお似合いですが、牡丹には何がマッチすると思いますか?
「唐獅子」です。
映画でも有名ですが「唐獅子牡丹」とよく言われますね。
ちなみに唐は中国で、唐自獅子牡丹は百獣の王である「獅子」と、百花の王である「牡丹」を組み合わせたもので、勇気の象徴です。
百獣の王と言われた唐獅子にも弱みがあり、牡丹の花の下が唯一、唐獅子の安住の地であったそうです。
また、寅の安住の地は竹ヤブですから、「虎に竹」と言われます。
ボタンに良く似た花で「灼薬(しゃくやく)」があります。
牡丹が終わるのを待って咲きますが、牡丹よりは格下です。
しかし、高貴な美しさがありますので「花の宰相」という名前が付けられております。フランスではバラの美しさに匹敵するので「聖母の薔薇」とも呼ばれます。
薬と言う字が使用されているように、西洋でも東洋でも薬草として重宝されていますが、牡丹は木ですが、灼薬は草です。
《立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿はユリの花》
灼薬のような風情を持ち合わせており、牡丹のように華麗で、かつユリのように清楚な感じの美しさを兼ね備えた女性を、花に例えた言葉です。
花を見て美しいと思うか否かは個人の好みでしょうが、昔から人間の感覚器官は、快適に生きて行く上で大切な物を「良し」と判断してきたのでしょうか?
南北に細長く、美しい四季を有する日本では、一年を通じ様々な花を愛でることが出来るので、綺麗な花を見たら「好ましい」という遺伝子が備わっているようですね。
そして、その美しさや、かぐわしさを女性に例えたわけですね。
次回に続きます。