マナーうんちく話649≪除夜の鐘は感謝と平和の響き≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

いよいよ大晦日ですね。
今年一年《マナーうんちく話》にお付き合いいただき誠にありがとうございました。来年も変わらずよろしくお願いいたします。

「晦日」は毎月の月末で、「大晦日」は12月31日のことです。
また晦日は「つもごり」、大晦日は「おおつもごり」とも言います。

ちなみに、つもごりとは月が隠れる「月籠もり(つきごもり)」のことです。
以前に触れましたが、太陰暦では新月から満月を経て新月になるまでを一月と計算しますので、月末は月が隠れる「つごもり」となるわけです。

そして大晦日と言えば「除夜の鐘」ですね。
除夜の鐘は日本人なら誰でも知っていますが、大晦日の正子(しょうね)の刻、すなわち真夜中の12時頃に、それぞれのお寺で108回つく鐘の事です。

では、なぜ108回つくのか?と言えば色々な説がありますが、定かではありません。「過去、現在、未来の三界における108の煩悩を払うため」と言う説が良く知られています。

煩悩とは「心身を乱し悩ます心の乱れ」、つまり「おびただしい人間の心の迷い」と解釈すればいいと思います。

それらが実際に108もあるのか、あるいは数が多い例えとして108という数字になっているのか、本当に難しいですね。
しかし、いずれにせよ、お寺の鐘には、「苦しみを癒し、心を綺麗にする力」があるような気がします。だから長い間、多くの日本人が心のよりどころにしたのではないでしょうか?

世界には新年を迎える多種多様なスタイルがあり、最近はカウントダウンが大流行ですが、私は除夜の鐘を聞きながら一年を振り返り、新たな気分で新年を迎えたいと思っています。

ところで、年々戦争を経験している人が少なくなってきましたが、戦時中に「金属類回収令」が存在したことをご存知でしょうか?

平和で豊かな時代に生まれ育った人には想像さえできない、夢も希望も失せてしまう、とても悲惨な政策です。

日本は元々米を中心とした農耕文化で栄えた国で、これといった資源が無く、大部分を輸入に頼っています。
このような国が世界大戦に参入したらどうなるか?

戦争に明け暮れていた昭和13年(1937年)には、すでに鉄鋼配給規則が制定されると共に、金属類の回収が実施され、職場や役所などから鉄製品が回収されていました。

しかし戦局が益々厳しくなるにつれ、自発的な回収では賄いきれなくなり、昭和16年には国家総動員法により、大々的な金属類の回収が行われたわけです。

学校の教材、マンホールの蓋、家庭における鍋や窯に至るまで、根こそぎ金属類が強制的に回収され、お寺の鐘も例外ではありませんでした。

こうなると、大晦日に厳かな気持ちで除夜の鐘を聞くことは不可能です。
当時国内に有った鐘の約9割、数にして約5万個の鐘がお寺から消えたと言われております。

現在の日本は世界屈指の豊かで平和な国ですが、これは自然に実現できたのではありません。このような悲惨な経験をして、どん底の中から不屈の精神で立ち上がり、経済を立て直し、繁栄の基盤を確立しました。

今年の初めに県内のあるお寺で、檀家の皆様を対象にした講話をさせていただいた時、そのお寺のご住職から、「多くの人は新年のご来光には手を合わせ、お願い事をするが、大晦日に沈む太陽に手を合わせて感謝する人は少ない」というお話をお聞かせいただきました。仏に仕える方の言葉には重みがあります。

今夜は除夜の鐘を聞きながら、このように平和で豊かな時代と国に生まれ育った事に、改めて感謝したいものです。そして、この平和をいつまでも持続していく努力をしなければいけないと思います。

何卒希望に満ちた良いお年をお迎え下さい。



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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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