マナーうんちく話588≪日本人と虫の文化≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

昨日とは打って変わって、秋らしい爽やかな天気に恵まれました。
ところで、秋の声を聞くと、美味しい食べ物や美しい絵画、そして音楽やスポーツのイメージが湧きますが、秋はグルメや読書や芸術だけではなく、風流を親しむ時期でもあります。

特別な知識やスキル、そしてお金が無くても、誰でも簡単に楽しめる風流は、まだまだ至る所に存在しています。例えば、スズムシやマツムシの声を聞くのもお勧めです。

いずれも、日本人なら誰でも知っている秋を代表する虫ですが、虫の声を聞いて楽しむ文化は、非常に長い歴史が有り、平安貴族に端を発します。

昔の人は自然と共生していたので、風や雲や花等で季節を感じたわけですが、蛍やセミや虫の声等でも、敏感に季節を察すると共に、それを見たり聞いたりして楽しんでいたのですね。

さらに、詩歌にまで登場させ、素晴らしい文化を開花させたわけです。
この感性は日本独特で、欧米人には理解できないことだと思います。

かの有名な松尾芭蕉の、「シズサカサ イワニシミイル セミノコエ」。この俳句はご存知の方も多いと思いますが、では、ここで歌われている蝉は、どんな種類の蝉かご存知でしょうか?

私たちには、この蝉が、ミンミンゼミでもアブラゼミでもツクツクボウシでも一向に構わない気がしますが、実は日本を代表する文学者の間で大論争が起きたというエピソードが有ります。

恐らく多くの外国人には、蝉の鳴き声は一種の雑音でしかなく理解できないことだと思いますが、日本人の感性は本当に素晴らしいと感心します。

そして、秋になると虫達の美しい音色に耳を傾け、それを楽しむ文化を作り上げましたね。これも世界に誇る文化だと思いませんか?

日本の平和憲法や礼儀作法が世界の模範になってほしいところですが、虫の音を聞いて風流を楽しむ文化は、それだけ日本が平和な世の中だったからこそ、根付いたのでしょうね。

ちなみに、「虫聞き」と言う美しい言葉をご存知でしょうか?

平安時代には、野に出かけて虫の鳴き声を楽しむ「虫聞き」、スズムシやマツムシを捕まえて、それを竹で作った籠に入れ鳴き声を楽しむ「虫選び」、虫の音を競い合う「虫合わせ」、捕まえた虫を庭に放ち声を楽しむ「野放ち」等などという文化が存在しましたが、平安時代は400年以上続きました。これは世界史上例がないことです。

そして江戸時代になると、美しい虫の音を楽しむ文化は一般庶民の間にも広がり、江戸中期には「虫売り」と言う商売が出来たとか。

このような意味を込めて、今年の秋は、美しい虫の音を聞きながら、風流を楽しみ、日本人を実感してみるのもお勧めです。

最近、人間関係がおもわしくない、なかなか良いアイディアが浮かんでこない、ファッションが思うように決まらない・・・。
そんな時は、感性が衰えてきたのかもしれません。
松虫や鈴虫の声から再度、感性を磨いてみて下さい。

加えて、ストレスを和らげたり、嫌な事を忘れたい時には、自分が心地良いと思うところに出かけてみるのもお勧めです。

私なら迷わず、一流ホテルのレストランやラウンジで、優雅に食事をしたり茶を楽しみます。ホテルは身近ながら非日常的で、安全で、癒しの空間であり、それに素敵なサービスが伴えば、身も心も和らぎます。

それでもだめなら、身近なお寺やお宮に参られるのもお勧めです。
もっともっと、お宮やお寺と縁を持つのも効果的です。
さらなるご利益を頂こうと願うなら、日頃から参拝することです。そして、参拝のポイントは感謝の心です。

加えて、身近なお寺で法話を聞かれるのもお勧めです。
法話には慈悲の心が有り、人生を心豊かに生きる知恵が凝縮されています。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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