まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
梅、万作に始まり、桜、桃、李(すもも)が春を華やかに彩り、やがて行く春になるわけですが、春のフィナーレを飾る花はなんといっても牡丹(ぼたん)ですね。
牡丹は、もとは中国原産の落葉小低木で、聖武天皇の頃日本に伝わり、瞬く間に貴族の間で流行したと言われております。
高貴な花として多くの人々に親しまれたせいか、「富貴草(ふうきぐさ)」、「花神(かしん)」、「花王(かおう)」、「百花王(ひゃったおう)」等と称賛する異名を数多く持っています。
今ではあまり関心を持たれてないようですが、色と言い、大きさと言い、花弁のボリュームと言い、牡丹ほど、昔から、愛され、尊ばれてきた花は珍しいのではないでしょうか?
それを裏付けるように、多くの有名人により短歌や俳句で読まれています。
ちなみに、「牡丹」の「牡」は「オス」を表し、「丹」は「赤」を表します。
頭に赤い模様が有る鶴を「丹頂鶴」と言いますが、それと同じ意味ですね。
ところで、品の良い美しい女性を表現する時に引用されますが、「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿はユリの花」の諺をご存知でしょうか?
江戸時代の諺の本に記載されているそうです。
ということは、この意味は、着物姿の、品の良い、美しい女性のたとえと言うことになりますね。
畳に正座している着物姿の女性が、立ちあがり、おもむろに歩き始める姿でしょうか、優美でありながらどこか凛として、それでいて、しなやかさや謙虚な態度が伺える理想的な女性像です。
この姿は欧米人には真似のできない美しさだと思いますが、ゆとりがあればぜひ、着物姿で畳の部屋で試してみて下さい。
ちなみに、日本女性は世界の男性の憧れだったそうですが、その美しさは、着物を着て、畳に正座した立ち居振る舞いに有ると言われております。
美人の基準は、その国々の文化や時代により異なりますが、感じ方も10人1色でしょう。
従って、ミスコンテストで自分が最も美しいと思える人が、必ずしも優勝するとは限りません。
しかし、どう考えてみても江戸時代の女性より、現代の女性の方がはるかにスタイルも良いし、顔も綺麗だし、髪の毛だって美しいと思うわけですが、如何でしょうか?
加えて、学校教育も当時とは、比較にならないほど整い、教養の有る女性が大幅に増えているのも事実です。
しかし今、この諺が死語になってしまっているのは残念な限りです。
むしろ、この諺に拍車がかかっていいと思うのですが・・・。
美しい姿の女性の立ち居振る舞い、すなわち、立ったり座ったりする姿を、数多く有る花の中でも特に、「花の王」といわれる牡丹、「花の宰相」と言われる芍薬、さらに「優雅な美しさ」を誇るユリにたとえているわけですので、現代の女性には、それに相応しい人が沢山存在すると思うわけです。
「美人薄命」とよく言われます。
美人は長生きできず不幸であると言う意味ですが、これもおかしいですね。
日本人女性は過去26年間世界一の長寿です。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はユリの花」。
この諺をもっと、多くの現代女性に、前向きに捉えて欲しいと、牡丹から芍薬に移行するこの季節になると思うわけです。