マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
雛祭りは、女児が無事に育ったことへの感謝と、良縁に恵まれますようにとの願いを込めて、女の子のいる家庭では、家族や親族が祝う大切な年中行事の一つですが、女の子は雛祭りを通じ、色々な事をお母さんから教わります。
最近では、雛人形を出したり、閉ったりするのが面倒くさいので、雛人形を飾らない家庭も増えているそうですが、「面倒くさい事をあえて子どもと共にすること」に、普遍的な意味が込められていると感じます。
始めに雛人形の基本的な飾り方に触れましたが、中でも2段目に飾る三人官女の内、真ん中の一人は歯が黒くて眉毛が有りません。
これは既婚者を表し、お内裏様に、結婚に関する様々な礼儀作法を教える役目が有ります。
また、雛祭りには、祖父母や親しい人を招待して会食を催すことが有ります。
その時に供する「祝い膳」には、「ハマグリの吸い物」が付きますが、これには深い意味が有ります。
ハマグリは同じ片割れでないと、ピッタリと合わないので、一夫一妻の「貞操観念」の大切さを意味します。
さらに、ハマグリは汚れた水を嫌うので「純潔」の大切さも表します。
余談事ですが、ハマグリの由来は、貝の形が栗に似ているのでハマグリと名付けられたそうですが、旬は桃の花と同じで、三月から四月です。
そして、今でも、「夫婦和合」の象徴として、結婚式の席で供されます。
現代では、貞操とか純潔と言えば価値観も様々ですが、当時は、一般庶民は別として、高貴な家では家を継ぐことに絶対的価値が置かれていたため、貞操や純潔と言うことには、とても敏感だったようです。
武家の娘が嫁入りの時に着る「白無垢」は、まさにその象徴ですね。
加えて、雛祭りは、「終わった後の片付け」も大切な意味が有ります。
良縁に恵まれるためには、面倒な後かたづけも、キチンと真心こめて、丁寧にできなければいけないよ!と言う教訓です。
そして、雛人形を片付けるタイミングは、雛祭りが季節の節目のお祭りであると言う視点から、節句を過ぎたら、早めに片付けるのがお勧めです。
25年は、3月5日が「啓蟄」ですから、すくなくとも、この日くらいまでには片付けてしまいたいですね。
片付けるのが遅れたら、「婚期が遅れる」と言う、言い伝えも有ります。
これは、いつまでもお祭り気分に浮かれてはいけないよ!との戒めの意味が込められているようです。
ところで、物事が遅くなる事を「トウが立つ」と言いますが、これは、野菜等が旬をとっくに過ぎ、成長し過ぎて、茎が伸び美味しくなくなる状態です。
当時は、平均寿命も短じかかったせいも有り、結婚適齢期が、女性は10代半ばでしたから、20歳も過ぎれば「トウが立つと」言われていたようですね。
ちなみに、雛人形のお内裏様の女雛は18歳だそうです。
以上のように、雛祭りは、お母さんが女の子に、「日本の四季の美しさ」、「良縁の大切さ」、「絆の大切さ」、「礼儀作法の大切さ」、を始め、「雛人形の飾り方やしまい方」、「客人をもてなす方法」等などを教える、とても大切なしきたりであると考えます。
幼い頃に、お母さんから、このような事をしっかり教えて頂いた子供は、まさに良縁に恵まれそうですね。
ちなみに、「幸せ婚」推進派の私は、「良縁」とは、「良い人に出会い、恋をして、愛を育み、幸せな結婚をして、幸せな家庭を築き、それを持続する事」だと定義づけています。
核家族化、共働き等で何かとせわしいこの頃ですけど、女の子にとっても、家族にとっても、親族にとっても、地域にとっても、国にとっても、良縁に恵まれることは、掛けがいのないことです。
3月3日の今日は、日本人全てが雛祭りの大切な意味を、再認識して欲しいと思います。