マナーうんちく話494≪和顔愛語≫
日本における成文化された礼儀・作法は聖徳太子の作った「十七条の憲法」だとされていますが、これは当時の貴族や官僚に対しての道徳的な規範を説いたものです。
それが次第に、貴族社会の秩序を保つために「形」に重きが置かれるようになります。
さらに武士の台頭により、その傾向はますます強まるわけですが、住まいにも多様な変化が起き、「寝殿造り」から「書院造へ」と移行し、「床の間」が作られるようになったわけです。
ちなみに、「床の間」は、仏教と非常に密接な関係が有り、「仏壇を床の間の起源とする説」や、もともと「中国よりもたらされた工芸品とか書画等を置いて観賞する所」だと言う説など色々あるようですが、確かではありません。
しかし、いずれにせよ、床の間は一段と高くなっているので、「高貴な人の位置する場」、あるいは「神聖な場」であるという認識は大切だと考えます。
従って、和室においては「床の間に近い場所」が上座になるという考え方は、理にかなっていると言えます。
そして、もてなしをする方は、客人が気持ち良く過ごせるよう気配りをするわけですが、この際、精神的・肉体的な側面からの配慮が必要です。
精神的な側面とは、「自分がどのように思われているか?」です。
上座に案内されれば、敬意を持たれていると気分が良くなります。
しかし、下座に案内されれば気分を害します。
一方、肉体的な側面は、冷暖房の良く効いている場所や、景色の良い所、あるいはトイレに近いところ等です。
特に小さい子ずれのお母さんや、高齢者の場合はトイレの近い場所や冷暖房の配慮は大切ですし、レストランなどでは、風景が何よりのご馳走になる所も有ります。
これらを考慮しながら、客人がどんな要件で訪問するのか、どんな人であるか、どんな場所であるか、どんな時であるか等も交えて、総合的に判断して、客人が最も心地よく過ごせる場所にお勧めする必要が有ります。
例えば、和室だったら、部屋がどの方向に向いていようと、「床の間」に近い場所が上座(じょうざ、かみざ)で、洋室なら「暖炉」が有る位置が上座とされていますが、そこが必ずしも景色が良い場所ではありません。
極端な場合は、入口に近い下座(げざ、しもざ)が一番景色の良い場所になる場合も有ります。
親しい友人同士で有ればそんなに気を使う必要は無いですが、相手が上得意さんであったり、立場が上の人や年配者の場合は、当然それなりの敬意をもって接することが必要です。
非常に難しいマナーだと思いますが、良好な人間関係を築くに当たって、非常に大切なマナーです。
さらに今では、床の間はおろか和室さえ無い住まいも多いし、さりとて、洋間に暖炉が有る家は日本ではあまり見かけません。
このように、「上座」と「下座」のマナーは「順番のマナー」と共に、非常に大切なマナーであるにも関わらず、ビジネスシーンでもプライベートシーンでも、何かと判断基準が不明確になっている所も多々あります。
そこで再度、「和室の場合」、「洋室の場合」、「上座に勧められた場合」、「序列のマナー」等など、色々なシーンに触れて参りますので参考にして下さい。
この続きは19日(火)に予定しております。