マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
商売をされている人にはなじみが深いと思いますが、今日は2月の最初の午(うま)の日ですから「初午」ですね。
全国的に稲荷神社の祭礼がおこなわれる日です。
春になって農業を開始する時に、「今年も何卒豊作でありますように」とお祈りするわけですが、現在では、お稲荷さんは、農業のみならず、商売繁盛や開運の神としてとらえられているようです。
お稲荷様の使者は狐だと言われていますが、近くにお稲荷様が有れば、狐の大好物である油揚げやお神酒等をお供えして、「初午参り」に行かれるのも良いですね。
ところで、お稲荷さんになぜ油揚げをお供えするのかご存知でしょうか?
もともと日本は、稲作を中心とした農耕文化で発展した国ですから、日本の「礼儀作法」や「しきたり」は、米と切っても切れない関係に有ります。
稲作は、畑を作り、水路を作り、それを管理しなければいけません。
大仕事ですから一人では無理で、多くの人が和を保ち、一致協力してこれに当たる必要が有ります。
つまり、働く時も、休む時も、全ての人が歩調を合わすことが大切です。
これが、日本における「しきたり」の起源です。
また、稲作には人の力だけでは無理な面が多々あります。
天気はとても重要な要素ですが、全ては自然が支配しています。
そこで、豊作になるために神様にすがらなければいけません。
日本のしきたりの多くは、神に祈る行事が多いのはこのためです。
さらに、相手が神様だから、その接し方にも大変神経を使わなくてはなりません。だから、日本の礼儀作法には美しさが求められています。
目出度い席で供せられる、「尾頭」付きの魚料理の食し方等は、その典型的な例です。
さらに、穀物を作るに当たって、それを食い荒らすネズミの被害が深刻で有ったわけですが、そのネズミを捕食してくれる、身近な存在だったのが狐です。
しかも、狐は大変賢い動物だったので、やがて狐が、人々の信仰の対象になったようです。
従って、最初は狐の好物である「鼠のてんぷら」を、お供えしていたようですが、殺生を嫌う仏教の影響も有り、やがて大豆を原料にした油揚げを、お供えしたと言うのが有力のようです。
ちなみに、甘く煮詰めた油揚げの中にすし飯を詰めた料理を、「稲荷ずし」とか「狐ずし」と言うのもそのためです。
そして、江戸時代には「初午の日」は、子どもたちが「寺子屋」に入学する日だったようです。
当時の子供は、この寺子屋に入学して始めて、共同生活したり、親以外の大人から色々と指導を受けるわけです。
また、その頃は文字を覚えるこがとても大切で、先ず墨を磨り、次に「いろはにほへと」の文字や、「一・二・三」等の数字を学び、基礎教育を身に付けたようです。
しかし、江戸時代といえども、幼い子供はやんちゃです。
時には悪ふざけもしますが、そんな時には、長い時間正座等が課せられされ、厳しく躾けられていたようです。
このようにして、細かい行儀作法や、師に対しての恩等、人間として大切な事を修得し、それに衣食住がなんとか安定してくると、他者に対する思いやりの心が目覚め、世界に誇る礼儀作法が一般まで普及したのではないでしょうか。
今、なにかと体罰が問題になっていますが、さりとて、何もかも過保護に育てられては将来が心配です。
ちなみに、旧暦の丑の日は、今日より一月以上後に成りますが、日本の入学式は諸外国と異なり春に行われるのは、意外にこの辺にあるのかもしれませんね。
桜の花と入学式。
日本ならではの春の風物詩です。
先進国に合わし秋入学が議論されているようですが、私にはピンときません。
日本の文化や礼儀作法は本当に奥が深いわけです。