マナーうんちく話220≪就職祝いと親先輩の役割≫
「白銀も黄金も玉もなにせむに 勝れる宝子にしかめやも」。
ご存知、山上億良の歌ですが、日本人は万葉の時代から、子どもを大切にしていたのが伺えます。
しかし、お金には換算できないほどかわいい子供でも、科学も医学も発達していなかった当時は、子どもの健やかな成長を、神様に祈念する傾向が強かったようです。
間もなく11月15日、「七五三」ですね。
男子は、数え年の3歳と5歳、女子は3歳と7歳になると、氏神様に参拝して、子どもの健やかな成長と幸福を祈る行事です。
晴れ着を着た幼い子供が、親の手を引かれて歩いている姿は、とてもほほえましいですね。
最近は、数え年より、満年齢で神様の祝福を受ける子どもが多いようですが、本来は「数え年」です。その理由は、このコラムの《マナーうんちく話159「数え年と満年齢」》を参考にして下さい。
より、七五三の意義がお分かり頂けると思います。
また、神様の祝福を受ける年齢は7歳、5歳、3歳と決まっていたようですが、お参りする日は特に決まっていなかったようです。
しかし、江戸時代になって、徳川綱吉の子どもが、11月15日にお祝いしたので、この日に定着したと言うのが有力です。
当時は栄養失調や疫病などによる、子供の死亡率が大変高く、3歳を迎える頃になって、ようやく今の戸籍に当たる人別帳や氏子帳に記載されていたようです。
従って、七五三は、子どもが、人生の大きな節目を迎えることができたことを祝う、「冠」の中でも、最も目出度い行事でした。
加えて、高家では、子どもが社会の一員として、デビューする意味も有ります。
ところで祝い方ですが、現代ではあまり11月15日にこだわることは無く、親の仕事の都合に合わすケースが多いようです。
近くの神社に家族でお参りして、今までの成長を感謝し、今後の幸せを祈念したらいいのではないでしょうか?
但し、お願いばかりでなく、先ずは感謝することが大切です。
この気持ちを大切にして頂きたいと思います。
親子で神社に参拝し、お賽銭を上げ、手を合わせるだけでいいと思いますが、より丁寧にと希望される方は、事前に社務所に予約を入れ、指定された日時に出向き、お祓いを受け、祝詞をあげて頂く方法も有ります。
その際は、規定料金を払われるか、蝶結びの紅白の祝儀袋に、「御初穂料」と表書きをし、その下に名前を書き、神社へ納めて下さい。
七五三は、もともと公家社会や武家社会だけで行われていた行事ですが、江戸時代になると、一般庶民に普及し、現在に至ります。
しかし、時代がいかに変わろうと、親が子を思う気持ちは変わりません。
家族揃って、盛大に祝ってあげて下さい。
これが、家族の絆づくりの原点だと思います。
なお、以前は、祖父母がお金を出し合って、晴れ着を贈る風習が有りましたが、今は貸衣裳が多いので、お金を贈るのが一般的になりました。
その際、表書きは「七五三御祝」「御祝」「祝七五三」等で、紅白の、蝶結び、熨斗つきの祝儀袋を使用して下さい。
遠方の祖父母などから、祝いを頂いたら、一月以内に、紅白の菓子などを、子どもの名前で内祝いとして贈ります。是非、写真も添えてあげて下さい。近くの場合は、食事会などにお誘いするのも良いですね。
世界屈指のあでやかな行事である、日本の「七五三」。
後世に残したい儀式です。