マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
接待は、「する側」と「される側」が、長い時間飲食を共にするので、人柄が問われます。また、ふとした事が大きな決め手になることも有ります。
心して望んで下さい。
そして接待の目的は、互いに親睦を深めることと、交渉を円滑に進めることです。これは昔も今も同じです。
今から150年以上前になりますが、日米交流の初めとなったペリー提督率いる黒船軍団が日本に来た時に、幕府は提督一行を日本料理で接待しています。
そして交渉が成立したら、今度はペリー提督から黒船内において、牛・豚・羊等からなる豪華な洋食と洋酒で、もてなしを受けています。
このように、接待には昔から料理と酒とコミュニケーションがつきものですから、互いに何でも、美味しく食べることができ、酒も飲めた方がはるかにいいです。そして「話し上手は聞き上手」です。
その上で、「もてなしの心」をいかんなく発揮して、相手に心地よい一時を過ごして頂くことです。
その心地よく過ごして頂くのに、一番良い場所が「上座」です。
和室なら床の間の前、洋室ならマントルピースの近所、あるいは入り口から遠い所や景色が良い所です。
そして、接待が成功するためには、なんといっても事前の下調べや準備です。
ネットの情報を鵜呑みにするのではなく、自分で目と口で調べておくことはとても大切です。
それに主役レベルの人の好みが加味されればいいですね。
下調べや準備に当たって、必ず明確にしなければいけないことは、日時・場所・料理・飲み物・予算・出席人数・顔ぶれ・担当者・お土産・車の手配等です。
さらに、会場の担当者と、とに角仲良くなっておくことです。
当日の席次ですが、接待の場合は、基本的には、男女・年齢に関係なく立場の上の人が上座になります。
良く解らなかったら会場係に聞かれると良いでしょう。
食事の進め方も大切です。
フランス料理等は酌をしませんが、和室での和食で有れば酌をする必要があります。その際、ビール瓶や銚子を持って回るのではなく、手ぶらで回ります。
手ぶらで、相手の前まで進んだら、正面で正座して、先ず挨拶です。
そして、相手の好みの飲み物を伺い、その近くにあるビール瓶や日本酒やジュース等を取り、酌をします。
最後に、挨拶して、場所を移動します。
移動の際は、大広間で有れば立って移動しますが、こじんまりした部屋なら「膝行」「膝退」になります。
このコラムの《和室での礼儀・作法》を参考にして下さい。
また、酌をして相手から勧められたら、両手で受け、酒が注がれたら、「ありがとうございます。頂戴いたします」といって、飲んで下さい。
飲み干したら、その盃を相手に「ありがとうございました」と言って両手で返します。
飲めない時には、「不調法ですので・・・。」といって丁寧に断ります。
接待客が、「飲めるタイプ」か「飲めないタイプ」かを、いち早く察して、臨機応変に応対できる人は接待美人です。
さらに、接待の達人は、如何にも接待しているという雰囲気を出さないで、さりげなく、さらりと応対します。
要は、相手に心地良くなってもらうには、相手に負担を掛けないことです。
まして、大金が動く時にはなおさらです。
経験を積んで、接待のツボを掴んで下さい。
あらゆる場面において応用が利き、良好な人間関係を築くことができます