マナーうんちく話217≪文明開化と握手≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:人間関係を良好にするマナー

別れと出会いの季節は、あちらこちらで握手をしているシーンをよく見かけます。
今回は、前回の「お辞儀」に引き続き、「握手」について触れておきます。

握手とは、二人の人が、出会った時や分かれる時に、互いの手を握り合ってかわす挨拶で、今では、ほぼ全世界で行われているようです。
そして、その歴史は結構古く、中世ヨーロッパにまで、さかのぼる言われております。

日本は世界に例のない平和な社会を築き、その社会背景から、相手に敬意を示す「お辞儀」の挨拶が生まれたと申しますが、「握手」は、これとは微妙に様子が異なります

中世ヨーロッパでは常に戦争が絶えませんでした。しかし、いつまでも戦争していたら互いに幸せになれないので、仲直りをしなければなりません。握手は、その手段として生まれた挨拶だと思います。

昨日まで戦争をしていた人と握手をするわけですから、互いに利き腕である右手を差し出して握り合い、かつ隙を見せないために相手の目を見ます。
「目は口ほどにモノを言う」と言われますね。

早い話し、日本の「お辞儀」は敬意や謙虚さを表現し、欧米の「握手」は敵意がないことを表します。

そして、その「握手」の文化が日本に入って来たのは、明治維新後です。
日本は、明治維新を契機に、多様な西洋文化を急いで取り入れたわけですが、挨拶の仕方まで大きく変わりました。つまり、当時の明治新政府としても、近代ヨーロッパ諸国と交流を深めて行くには、握手は避けて通れなかったようです。

「和食」と「洋食」。
「お辞儀」と「握手」。
食事にしても挨拶にしても、日常生活に欠かすことができないものですが、色々な分野で、和・洋が入り乱れているのが現状です。あえてどちらが大切か?優先順位をつけるとしたら、テーブルマナーでは和食を、挨拶のマナーだったらお辞儀でしょうか。

何度も申しますが、国際化が進展すればするほど、先ず自国の文化や礼儀・作法をわきまえ、次に相手国の文化を理解するのが私の持論です。

勿論、両方理解し、正しく発揮できるのが理想ですけど・・・。

但し、箸が上手に持てなければ洋食のマナーも難しいですし、お辞儀がきちんとできない人にとっては握手もぎこちなくなると思います。

余談事になりますが、子どもに英語を教えることに異論は有りませんが、その前に先ず正しい箸の持ち方や、お辞儀の意味や作法をキチンと教え、それから英語を教えるべきだと私は思っています。


それでは、ここで「握手のマナー」に触れておきます。

○手を差し出すのは
・上位者から下位者が基本ですが、場合により下位者が手を伸べ上位者がそれに応じることもあります。
・女性から男性に差し出して下さい。また女性同士はお勧めできません。

○握手をする時には
・座ったままでなく起立して行って下さい。
・基本的には手袋を脱いで下さい。但し、女性の礼装の場合は、脱がなくても良いとされています。
・右手を差し出し、手全体をしっかり握ります。但し女性相手の場合は軽く握ります。
・相手の目をキチンとみて下さい。
・頭は下げないでください。

日本では、選挙の立候補者が、握手して回るケースをよく見かけます。
握手をしたら、自分の手の温もりが相手に伝わり、心理的に良い効果が期待できるのでしょうね。でも、ほとんどの立候補者が、手袋をはめたままですね。

ある時は箸で、ある時はフォークとナイフで、またある時はお辞儀を、そして握手をと、日本人は本当に大変だと思いますが、日本で生活している以上、両方を格好よく決め、誰とでも、良好な人間関係を築きたいものです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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