マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
【冠婚葬祭の知識とマナー9】 五節句と最も目出度い重陽の節句
朝夕めっきり涼しくなってきましたが、9月8日は二十四節季の一つ「白露」です。夏から秋へと移り変わる頃のことです。
ところで「重陽の節句」をご存知でしょうか?
節句には、「人日(じんじつ)」、「上巳(じょうし)」、「端午(たんご)」、「七夕(たなばた)」、それに「重陽(ちょうよう)」の五つの節句が有ります。
今では、「重陽の節句」はすっかり影をひそめてしまいましたが、実は最もお目出度い日とされていました。他の節句と同じように中国からもたらされたものです。
そして、その中国では、偶数と奇数では、奇数の方が縁起の良い「陽の数字」だとされており、中でも9はその極みです。だから最高に縁起の良い数字が重なる日なので、「重陽の節句」として盛大にお祝いをしたわけです。
五節句は全て奇数月ですが、奇数を敬う考え方は日本文化にも、至る所で見受かられます。例えば俳句は5・7・5、短歌は5・7・5・7・7、琴は13弦、三味線は3弦です。さらに扇子やうちわの骨の数も奇数でまとめられていますし、3・3・9度の杯もそうですね。是非、頭の片隅にでも入れておいて下さいね。
また、重陽の節句に、酒に菊の花を浮かべた「菊酒」を飲めば長寿にあやかるという言い伝えがあります。ちなみに、この重陽の行事が日本に入るまでは、菊の花が意識されることは無かったようです。従って万葉集には百数十種類もの花が謳われていますが、菊の花は登場しません。
しかし、重陽の行事が日本にもたらされてくると、次第に菊の花に人気が出てきて、古今和歌集には詠まれてきます。さらに、鎌倉時代には、菊の花は皇室の紋章に採用されるまでになります。加えて、江戸時代に入ると多彩な文化が栄え、菊の花もすっかり多くの人々の観賞用の花として定着し、また菊人形等にも使用され、現在に至りました。余談事ですが、徳川の紋章は葵です。
さらに、菊の花には、邪気を払い、寿命を延ばす不思議な力が潜んでいると考えられていました。そういえば、「上巳の節句(桃の節句)」には、雛飾りに桃の花を添えますが、桃の花にも、邪気を払い、寿命を延ばす力が有ると信じられ、桃の酒が飲まれます。
節句の名前は、春の桃、初夏の菖蒲、秋の菊のように、その季節を代表する花のネーミングが付けられています。その中でも紛れもなく菊の花は日本を代表する花で、今では、安価でスーパーでも花屋さんでも簡単に手に入れることができます。
九日の夜は、自分自身と家族の長寿と繁栄を願い、酒に菊の花びらを浮かべ、「菊酒」と洒落て見られては如何でしょうか?
猛暑と無理な節電で疲れた、身体と心が喜んでくれ、明日への元気が湧いてきますよ!
今年の秋色のファッションを追いかけるのも楽しいですが、昔のロマンを再現するのも格別です。