マナーうんちく話535≪五風十雨≫
マナーうんちく話99《七夕と願い事のマナー》
今年も早、半分が過ぎ、いよいよ7月、「文月」ですね。
昨年は、天の川を挟んで繰り広げられる、織姫と彦星の七夕に関するロマン伝説をこのコラムで取り上げましたが、今年はまた別の角度から七夕をとらえてみたいと思います。
今年は、不景気、就職難、結婚難などに加え、地震、津波、原発事故によるトリプル災害に見舞われた関係で、特に多くの場所で、短冊に願い事を書いて吊るすところが多いのではと思います。
また、日本人なら殆どの人が、保育園・幼稚園・小学校・地域・商店街・イベント等々でこのような経験をお持ちではないでしょうか。
ではなぜ?笹の葉に、短冊に願い事を書いて吊るすのでしょうか?
そして、どのようなお願いをしたらよいのでしょうか?
それは、7月7日に、女性が裁縫の上達を願い、美しい糸を、5本の針に通して祈った、中国の「乞巧でん(きっこうでん)」に由来するといわれています。文字通り、巧みになることを乞う儀式ですね。
なぜ裁縫の技術の上達を願ったのかと言えば、昨年の7月7日のコラムで取り上げましたように、織姫にあやかったからという説が一般的です。
ところで、織姫と彦星のラブロマンスの歴史は古く、中国における2000年前位の物語だそうです。それが1200年位前に、唐から日本に伝わり、万葉集にも130種以上七夕に関する歌が詠まれているそうですね。
そして明治以降になると、唱歌にも登場してきます。
1番「ささのはさらさら のきばにゆれる おほしさまきらきら きんぎんすなで」
2番「ごしきのたんざく わたしがかいた おほしさまきらきら そらからみてる」
歌詞は以上です。謳われた経験もお有りだと思います。
では、この歌詞の正式な題名をご存知でしょうか?
正解は「たなばたさま」です。
ところで1番で、「笹の葉」と歌っていますが、それは、笹の葉(竹)は古来より、松や柳などと共に、神聖な植物としてとらえられていたためです。
また2番では、「五色の短冊」と表現されていますが、元は五色の布だったそうですが、それは高価なので、やがて紙の短冊になりました。
さらに5色にもそれなりの理由があり、それについては諸説あります。
青、黄色、赤、白、黒(紫)の5色で、それぞれ、「人の守るべき仁・礼・信・義・智を表す色」だとか、「織姫・彦星・さそり座・天の川・夜空の色」だという説が存在します。
色々なことに触れましたが、基本的には、裁縫の技術、そしてそこから派生して文字や文学の上達を祈願する行事が七夕ですね。
今時のことですから、裁縫の技術の向上を願う人は少ないとしても、せめて習字やそろばん、踊りのように学業や芸事全般の願い事で有ってほしいものです。
「イケメンやベッピンに出会えますように」とか、「宝くじに当たりますように」とかは感心できません。願い事の内容が習い事などに特定されるわけですね。
そして家庭では、6日の夕方に飾り、7日の夜に取り下げます。最も、保育園、幼稚園、商店街などでは早くから飾りますが、せめて取り下げる時くらいは7日の夜にしたいものです。
そして、取り下げた笹や短冊は、本来は、海や川に流すと願いが叶うとされていました。
今から40年前頃まではそのような習慣が残っていましたが、次第に環境汚染が深刻になるにつれ、このような習慣は消え失してしまいましたね。
そして最近では焼却し、願い事を火に託します。
時代と共に、「水」から「火」へと正反対になったわけです。
時代の流れだと言ってしまえば元も子もないですが、何百年も何千年も続いている伝統行事です。出来る限り本来の意味にそぐいたいものだと感じます。
そもそも環境汚染で本当に怖いのは、カドニウム汚染や放射能汚染のはずです・・・。
本質を間違えてはいけませんね!
ちなみに7月のことを「文月」と表現するのは、7月7日の七夕の日に、牽牛・織女の星に、短冊に詩歌を書き、それを供えたことに由来するという説が有力です。
願い事を詩歌に託す!
昔の人は本当に情緒が豊かだったのですね。