マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
マナーうんちく話67《気品のある言葉遣い》
あなたを魅了する素敵言葉術とは?
学生時代、酒とパチンコとマージャンに明け暮れていましたが、映画もたくさん見ました。その中で、いまだに心に残る感動的なシーンが多々あります。
オードリー・ヘプバーン主演の「My Fair Lady」もそうです。ご覧になられた方も多いと思います。テレビでも何回も放映されましたね。
言語学者であるヒギンズ教授が、下町の貧しい花売り娘イライザ(オードリー・ヘプバーン)と、ふとしたことで知り合います。その時のイライザの言葉遣いは、それはひどいもので、お世辞にも褒められたものではありませんでした。そこでヒギンズ教授は、彼女に言葉遣いやマナーを徹底的に教え込み、見事に彼女を完璧な淑女に変身させ、多くの人々を魅了させるというようなストーリーでした。
同じ人間でも、言葉遣いやマナー次第で雲泥の差が出るということではないでしょうか。
マナー本とかセミナー等では、「正しい言葉遣い」について触れております。
それでは一体全体、何を持って正しい言葉遣いと言うのでしょうか?
非常に難しい問題だと思います。
日本語はカタカナ・ひらかな・漢字ありで大変難しいのは御承知に通りですが、法律や数学や科学などと異なり、定められたものでもなければ、方程式や法則なども存在しません。
恐らく言語としては、日本語は世界一長い歴史を有していると思いますが、それぞれの時代に寄って言い方が微妙に変化しますし、「方言」と呼ばれるように、地域によっても大きく異なります。岡山には、岡山に根を下ろした立派な「岡山弁」が存在します。日本全国、津々浦々においてもしかりです。
私は「言葉遣い」そのものに、「正しい」とか「間違っている」とか、「キレイ」とか「汚い」とか、明確な基準を定めるのは大変難しいと思います。
しかし、だからと言って、使い方を誤れば当然誤解を生じたり、人間関係にひずみが生じたりします。さらに日本語は日本人全員の言葉ですから、めいめいが好き勝手にすればいいものでもありません。
ではどうするの?ということになります。
「言葉遣い」=「心遣い」ではないでしょうか?
心遣いとは、相手に対する敬意と真心だと思います。
話をする時に、話し相手に対し、敬意と真心を持って接することだと思います。
社交辞令で「時節柄お気をつけくださいませ」と心にもないことをいうのと、本心から「季節の変わり目じゃけー、本当に気をつけにゃーいけんで」と岡山弁丸出しで言うのと、どちらがいいかといえば、少々言葉が乱雑でも、私は後者を支持します。
そして、言葉と言うものは、それを発する人の心次第で、美しくもなり、汚くもなるものだということを付け加えておきたいと思います。
勿論、聞いて心地よくなる「美しい言葉」が、日本語には沢山あります。敬語もあります。臨機応変に使い分けできれば最高です。でもそれらの数は100や200ではありません。全て覚えるとしたら気が遠くなる努力を要します。無理して使い慣れない敬語にこだわる事より、ポイントを押さえられることをお勧めします。
○世界一美しい言葉とされている「ありがとう」を連発して下さい。買い物に行っても喫茶店に行っても、支払いの時は「ありがとう」です。モノを頂いたら、「すみません」ではなく、「ありがとうございます」です。「ありがとう」と「すみません」の使い分けをキチンとして下さい。ここにあなたの品が現れます。
○特に、女性にお勧めの言葉は「わたくし」です。「あたし」「わたし」ではなく、「わたくし」と言う言い方を是非モノにして下さい。
以前、このコラム欄で、自分自身を大切にして下さいと書いたことがありますが、世の中で一番大切なものは、他ならぬ「自分自身」です。その一番大切な自分自身を呼ぶ、いわゆる「一人称の言葉」は、日本語には沢山あります。「俺」「おいら」「わたし」「あたし」等など。それらの中で一番美しい言葉が「わたくし」です。
自分を大切にするということは、自分の呼び方も美しくすることです。
是非この「わたくし」という言葉も、「ありがとう」と共にモノにして下さい。但し、今まで「あたし」とか「わたし」と言っていた人が、急に「わたくし」と言ったら、周囲の人もびっくりします。徐々に慣れてください。
そして、「美しい言葉」には、「それにマッチした美しい振る舞い」が必要です。併せて身につけられることをお勧めします。
イライザは下町の貧しい娘から、このようにして女王様のようになり、多くの男どもを虜にしたのですね。挑戦して見られるだけの値打があると思います・・・。
結論です。
「気品のある言葉遣い」とは、今まで何回も申しましたが、相手の良いところを見出し、それを素直な心で発することではないでしょうか?
良好な人間関係作りの全てがここにあると思います。