マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
平松幹夫のマナーうんちく話⑫《寒露の頃とマナー精神》
草木に宿る露が冷たくなり、秋が次第に深まっていく頃です。
10月8日は二十四節季の一つ「寒露」でした。
この頃になると、夕焼けが綺麗になると共に、
・コオロギたちは巣籠りを始めます。
・農家の人は作物の取り入れに追われます。
・果実の実が落ち始めます。
・紅葉の便りが届き始めます。
今まさに、「実りの秋」「収穫の秋」「味覚の秋」「芸術の秋」「行楽の秋」の真っ最中です。
日本の秋は本当にハッピーだと思います。感謝!感謝!
そして日本の秋といえば「夕焼け小焼け」でしょうか。
釣瓶落としの時節は美しい夕焼けに出会える機会が多くなります。
岐路に急ぐ途中、夕焼けの何とも言えない美しさに、思わず足を止めて見入ってしまった経験をお持ちの方も多いと思います。
「晴れの国岡山」は特に多いでしょうね。
幼い頃からいつも見慣れた光景ですが、最近では見るたびにジーンと込み上げてくるものがあります。皆さまは如何でしょうか?
ところで夕焼けを見て感じることは、
「一日の終わり」「儚さ」「人恋しさ」「明日への希望」等ではないでしょうか。
そういえば、日本人は殊の外「終わりの美しさ」を好むようです。
「有終の美」「立つ鳥跡を濁さず」「終わりよければ全て良し」という言葉も存在します。
一方、「春の来ない冬はない」「朝の来ない夜はない」等という言葉もよく聞かれます。
西の空に沈んだ太陽は翌朝必ず昇ってきます。
そこに「再生」を求め、新たな夢や希望を抱くこともあります。
かって小説、歌、映画には夕焼けは付きものでした。
特に若者の恋とか失恋とか未来とか友情とか・・・
若者が、思い、悩み、夕日に向かって力一杯走っていくシーンが沢山ありました。
寒露の頃は、空が澄み渡り、夕日がひときわ美しくなります。
有線放送から流れる「夕焼け小焼けの歌」「赤とんぼの歌」を耳にしたり、美しい夕焼けを目にしたら、{大切な人のこと}{家族のこと}{故郷の両親のこと}{友人のこと}等思い起こしてみませんか?
最近忙しすぎてコミュニケーションがなかったなー・・・
しばらく故郷に帰っていないなー・・・
親不孝ばかりしていたなー・・・
世話になった人にご無沙汰しているなー・・・等など
秋の夕焼けに限って言えることですが、「夕焼けのあくる日は晴れ」だそうです。
日本は今、豊かで便利になった代償として、人間関係がとても希薄になりました。
私たちの心を惹きつける「美しい夕焼け」に出会ったら、自然の営みに感謝するとともに、
改めて「人と人との在り方」を再認識してみたいものです。
マナーの原点はここにあるような気がします。
夕焼け空はいつの時代にも、私たちに感動を与え、大切なことを教えてくれます。
寒くなったり、暑くなったりです。ご自愛ください。