マナーうんちく話498≪うかつ謝り≫
平松幹夫のマナーうんちく話《大和撫子とマナー》
台風の影響でしょうか、涼しい朝になりました。
今日は24節季の「白露」。雨のせいで草木に大きな白露が一杯付いておりました。
昔の人は夏から秋への季節の交替を、草花についた露で感じ取りました。またこの頃になるとツバメが南に去っていきますが、元気にたどり着いてほしいものです。
また夏の象徴である向日葵から、日本女性を象徴する「大和撫子」の花が私たちの目を楽しませてくれる頃です。
「白露」も美しい言葉ですが、「大和撫子」も大変品のいい響きで、身も心も美しい日本女性の代名詞としてつかわれてきました。
「上品・清楚・凛・慎ましい・古風・可憐」さらに「ひたすら男性に尽くす」等のイメージが強いですね。
しかしいつ頃からこのように呼ばれ始めたのか、また具体的に誰を指さして言った言葉かは判明していません。
万葉集で山上億良が選定した「秋の七草」に登場する撫子はもともと日本原産ですが、中国産の唐撫子もあり、それと区別するために「大和撫子」と呼ばれるようになったという説が有力です。
「ナデシコ」はどんな場所でも根を張り、小さく可憐な花を一杯つけ、可愛い子供みたいで、思わず撫でたくなるので「撫子」というネーミングをつけてもらいました。
そして、万葉集に登場する撫子の歌はほとんどが美しい女性の面影を歌っているように、昔から、礼儀正しく清楚で優しい日本人女性の美称として現在にいたっているようです。
一方パリの舞台女優から大富豪の男爵夫人になったナディース・ロスチャイルド夫人が書いた「ロスチャイルド家の上流マナーブック」では、シンデレラが幸せになる秘訣は《マナー》で、優しさ、思いやり、控えめさ、礼儀正しさ、さらに自分自身と他人に対する敬い等の大切さを説いています。
理想的な女性像は日本も西洋も同じみたいですね。
但し、儒教を背景にして普及した日本の礼儀・作法と、キリスト教文化すなわちレディーファースト文化の西洋のマナーとではかなり理念も表現方法も異なります。
世界的には上級学校になればなるほど格調高いマナーを教えているようです。
イギリスのケンブリッジ等が典型的な例です。
日本でも忠臣蔵で有名な吉良家は礼儀・作法を教える名門の家柄でした。
また戦前の女学校でおこなわれた「良妻賢母教育」は教養と礼儀・作法を兼ね備えた素敵な女性を多く輩出しました。
良妻賢母と言えば、如何にも古臭い女性規範のイメージが強く現代社会にはなじまないと考えられがちですが、平松流に解釈すれば「大和撫子としての徳を兼ね備え、当時の国家が期待する優良な子どもを育てることができる教養・礼儀・作法を身に付けた女性」のことです。和の礼儀・作法のみならず、積極的に欧米諸国の文化(マナーやエチケット)も吸収していたようです。複合文化の最先端を走っていたと思います。
今、日本は男女共同参画社会になり、「大和撫子」「良妻賢母」といった言葉は死語に近くなり、「肉食系女子」といった言葉が誕生したのはご承知の通りです。
恋や恋愛や結婚、そして仕事にまで積極的で行動的な肉食系女子は素晴らしいと感じますが、受けるイメージは大きく異なります。また恋愛観・結婚観・離婚観・人生観なども大きく異なってきました。
どちらがより好感も持たれハッピーなのかは人それぞれだと思います。
マナーの講演・講座等を通じ多くの方から意見を聴かせていただく機会が多々ありますが、実に多種多様な考え方があります。
そこで次回は「好感の持たれる女性のマナー」に触れてみます。
ご期待下さい。