甲南大学が臨床心理士指定大学院の募集停止をします
臨床心理士指定大学院の選び方と難易度
5月も半ばです。臨床心理士指定大学院を目指す受験生にとって、本格的な受験準備が始まりました。公認心理師資格制度の導入以降、心理職を志す方の多くがその制度に注目している中で、臨床心理士という資格は、依然として根強い需要と専門的価値を保っています。そこで現在の臨床心理士指定大学院の選び方、そして現在の難易度について整理など、受験生がどのような視点で大学院を選択し、戦略を立てるべきかについて述べていきます。
臨床心理士の意義と受験者の多様化
当塾では、臨床心理士指定大学院の受験対策の充実を日々考えています。今年も例年と変わらず、多くの方が臨床心理士指定大学院の受験を目指しておられます。特に注目すべきは、学部で心理学の単位を取得していないために公認心理師資格は得られないものの、心理職に就く強い意志を持って臨床心理士を目指している方、特に社会人の方が多いという点です。こうした方々の情熱と姿勢にこそ、臨床心理士資格の本質があると考えます。したがって、この資格の重要性は今後も色あせることはないと確信しています。
大学院選びで重視すべき視点
大学院を選ぶ際には、複数の観点から情報を整理することが求められます。まず確認すべきは、当該大学院がどのようなカリキュラムを提供しているかという点です。多くの大学院では、臨床心理士指定大学院であると同時に、公認心理師養成にも対応しています。そのため、授業や実習のボリュームが非常に大きくなり、履修管理が難しくなっているケースもあります。
公認心理師に対応する大学院では、心理実践実習が450時間以上課せられることになっています。この実習時間の確保方法や時期は大学によって異なります。通信制など学生数の多い大学では、全員が同様に実習機会を得られるわけではないため、実施体制の確認は必須です。また、公認心理師と臨床心理士の両資格を目指す場合、単位の重複や並行履修の可否なども重要な検討事項となります。
さらに、大学院選びにおいては、教育方針や指導体制、教員の専門領域なども考慮すべきです。心理臨床に関して特化したカリキュラムがあるか、研究と実践のバランスが取れているか、地域連携や実習先の多様性など、将来のキャリア形成を見据えた判断が必要です。
難易度上昇の実態
ここ数年、臨床心理士指定大学院の難易度は着実に上昇しています。志願者の数は減少しておらず、むしろ増加傾向にある大学院も少なくありません。各校の入試倍率を見ても、競争が激化していることが明らかです。
たとえば、兵庫教育大学、鳴門教育大学、京都文教大学、立命館大学などは、例年受験者が非常に多く、難易度は高めに推移しています。追手門学院大学では5倍前後の倍率が報告されており、龍谷大学や帝塚山大学高倍率です。これらの数字は、受験戦略を考えるうえで重要な指標となります。
こうした状況下では、自己のパフォーマンスを最大限に引き出すだけでなく、相対的な競争力も求められます。他者と比較して優位性のある研究計画書を作成する、学科試験での得点力を高めるなど、より高度な受験戦略が必要です。これまで以上に「自分をどう見せるか」に意識を向けるべきタイミングが来ていると言えるでしょう。
文部科学省と厚生労働省が定める公認心理師カリキュラムにおいては、以下の10科目が必修とされています。
保健医療分野に関する理論と支援の展開
福祉分野に関する理論と支援の展開
教育分野に関する理論と支援の展開
司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
産業・労働分野に関する理論と支援の展開
心理的アセスメントに関する理論と実践
心理支援に関する理論と実践
家族関係・集団・地域社会における心理支援の理論と実践
心の健康教育に関する理論と実践
心理実践実習(450時間以上)
修士課程の標準修了要件が32単位であることを考えると、上記科目だけでも相当な比重を占めることになります。したがって、どのように効率よく履修計画を立てられるか、また大学がどのようにそれを支援しているかは、大学院選びにおいて非常に重要なポイントです。
受験者層の変化と今後の展望
受験者層の変化と今後の展望
現在の臨床心理士指定大学院の受験者層は、大きく2つに分けられます。ひとつは、心理学系の学部でしっかりと単位を取得してきた若年層。もう一方は、社会人経験を持ちながらも、学部で心理学を履修していなかった層です。
後者は公認心理師資格が取得できない場合が多いものの、臨床心理士としての専門性を強く志向している傾向があります。その一方で、前者の層には、大学1年次から心理職を目指して学んできた人材も多く、研究や実習における準備度が非常に高いという特徴があります。このように受験者の層が多様化している現在、大学院によっては合格点が上昇しているところもあります。
全体としては、臨床心理士指定大学院の難易度は年々上昇していると見るのが妥当です。情報収集の重要性が高まるなか、単に志望校を選ぶだけでなく、どのようなスタンスで受験に臨むか、自身の特性や強みをどのように活かすかが問われています。
臨床心理士指定大学院の選び方においては、カリキュラム、実習体制、入試倍率、そして自身の経歴との整合性など、多くの要素を総合的に検討する必要があります。難易度は上がっていますが、確かな準備と戦略的な志望校選びによって、十分に突破は可能です。
受験に向けた道のりを着実に歩むためにも、早期の情報収集と計画立案が欠かせません。