面接で言うと一撃不合格につながってしまうこと

井上博文

井上博文

テーマ:実は知らない面接対策・集団討論対策

志望理由の「汎用化」は命取り

「編入学志望理由書」や「大学院志望理由書」をどこにでも出せるような形で書く人がいますが、これは志から間違っています。志望理由書とは、その学校・学科・資格でなければならない理由を書くものです。「第一志望であること」や「最も優れているから」という比較ではなく、個別性に基づいた内容が求められます。

また、「●●語が読めないから○大学に入りたい」という記述は理屈として成立しません。言語習得は本人の努力によるものであり、入学の理由にはなりません。「●●語の能力を活かして××の研究をしたい」という具体的かつポジティブな方向に転換することが重要です。

志望理由書に説得力を持たせるための姿勢

志望理由書に説得力をもたせるには、まず「自分が何をできるか」を明確にすることです。「できないこと」を理由に学校を選ぶのではなく、「できること」を活かす場として、その学校を選ぶという構図をつくるべきです。これによって、「自分がその学校で何を成し遂げたいか」が明確になり、相手の印象に残る内容となります。

志望理由は、面接でも繰り返し問われる重要なテーマです。書類で説得力がある内容を述べられても、面接でうまく答えられなければ評価は下がります。逆に、面接で同じ方向性で深掘りし、さらに熱意を補強できれば、一貫性のある志望動機として強い印象を残すことができます。

伝わらないのは自分の責任

「そんなつもりではなかった」「誤解された」と後悔するのは、面接でよくある話です。しかし、面接官は応募者の発言からしか情報を得ることができません。自分の意図や熱意をきちんと伝える責任は応募者にあります。事前に学校に足を運び、資料を読み込み、自分が学びたい内容を具体的に描くことが大切です。

また、志望校の教員の研究テーマや最近の学会発表に目を通しておくことで、「なぜこの先生の指導を受けたいのか」を具体的に語れるようになります。ここまで準備してこそ、説得力が出てくるのです。

さらに、「伝わる」ためには、自分の言葉を客観視する練習も不可欠です。録音して確認したり、第三者にフィードバックをもらったりすることで、自分の話し方の癖や不明瞭な表現に気づくことができます。誤解を防ぐための努力は、面接合格に直結します。

【言ってはいけないフレーズ①:「第一志望です」】
この言葉は、他の学校も視野に入れていることを暗に示してしまうため、面接では厳禁です。「第一志望です」と言いながら「今日初めてキャンパスに来ました」では説得力がありません。「その学校でなければならない理由」を深く掘り下げ、言語化することが求められます。

これは恋愛にたとえると分かりやすいです。「あなたが一番です」と告白するとしながら「2番目がいるんかいな!」となり、信頼を得られません。志望理由とは誠意の表れであり、比較の中での相対評価ではなく、価値を伝えることが重要です。

【言ってはいけないフレーズ②:「頑張ります」「努力します」】
「頑張ります」は結果が伴うかどうか不明な中途半端な返答です。面接では、具体的にどう動くのか、計画をもって説明する方が効果的です。「どういう研究を、どの先生の指導で、どんな手法でやるのか」を言えることが「頑張ります」に代わる最良の表現です。

また、面接の最後に「頑張りますのでよろしくお願いします」と述べる人がいますが、これは悪い印象を与える典型例です。面接官はすでに受験生が「頑張る」前提で評価をしており、その一言で差がつくことはありません。それよりも「本日いただいたご質問をふまえ、さらに課題を深めたいと思います」といった返答の方が数段良い印象を与えるでしょう。

【言ってはいけないフレーズ③:ネガティブな自己評価】
「私ごときが」「私なんて」といった自己卑下の発言は、謙虚ではなく卑屈です。面接官にとっては不快感を与えかねません。また、否定から入る話し方は「人の話を聞かない人」と見なされてしまいます。ポジティブな表現と具体的な実績で、説得力のある自己紹介を心がけましょう。

ネガティブ発言は自己認識の低さを示すだけでなく、協働性にも疑問符がつきます。「どうせ私は……」という思考は、職場での連携や信頼構築にも悪影響を与えると見なされやすいため、厳禁です。

また、面接では「弱さ」よりも「回復力」や「工夫の力」を評価される場です。困難をどう乗り越えてきたか、どのように改善を図ってきたかを語ることで、前向きな印象を与えることができます。

【言ってはいけないフレーズ④:「僕」「俺」など不適切な一人称】
面接において適切な一人称は「私」です。「俺」「僕」など、カジュアルな一人称を使うと、常識がないと見なされ、評価を下げるリスクがあります。TPOをわきまえた言葉遣いは、基礎的な社会性の表現でもあります。

冗談みたいですが、「俺」を使う人は現実にいます。「俺」は、自信家・攻撃的・柔軟性がないなどのイメージと結びつきやすく、面接という場にはそぐいません。社会人経験がある人がうっかり「昔のクセ」で口にしてしまうこともありますが、直前の面接練習で矯正しておくことが重要です。

面接では「自分がどのような場面でも柔軟に適応できる人間かどうか」が見られています。言葉づかいひとつでも、その柔軟性は測られていることを意識しましょう。

【言ってはいけないフレーズ⑤:抽象的な称賛表現】
「すばらしい」「かっこいい」「人間性が優れている」などの抽象的表現は、面接では避けるべきです。「人間性」と言っても、その定義はあいまいです。むしろ、具体的な経験を語る中で人間性をにじませる方が、説得力を持ちます。

「人間性」という言葉に頼る人は、その具体的エピソードが薄いことが多く、印象に残りません。たとえば、「災害支援ボランティアで現地に3回赴いた」「高齢者施設で毎月の傾聴活動を3年間継続した」といった経験を交えた方が、真の意味での人間性は伝わるのです。

【悲劇のフレーズ集:本当にあった不合格事例】
・「食べていくため」
・「リストラされたから」
・「親が医療従事者だから」
・「自分でもできそうだったから」
・「現場に出たくないです」
これらは動機として軽すぎたり、他責的だったりするため、合格にはつながりません。

動機には重みが必要です。環境のせいや他人の影響ではなく、自分自身の内的な動機を中心に語るようにしてください。自律性のある人材が求められていることを忘れてはいけません。

【質疑応答での落とし穴】
「厳しいと聞きますが大丈夫でしょうか?」といった質問は、「厳しい環境が不安です」と読み取られてしまいがちです。不安を安易に表現することは、自信のなさの表れと取られかねません。また、「合格率が高いから志望した」と言うと、「低かったら来ないのか」と突っ込まれることもあり、依存的姿勢と受け取られます。

最後の質問の場面で、何も質問しないと「関心がない」と判断されることもあります。逆に、「授業の進度について教えていただけますか」「実習の指導体制はどのようになっていますか」といった前向きな質問であれば、意欲を示すことができます。

この場面では、あらかじめ質問を用意しておくことが望ましいです。学校案内やホームページを見たうえで、それでもわからなかった点を尋ねると、下調べの姿勢も評価されます。

【要注意ワード:「ほめられて伸びるタイプ」】
「ほめられて伸びる」や「叱られて伸びる」といった言い回しは、裏を返せば「指導されないと動けない」「叱られたら萎縮する」という依存的なニュアンスを含んでいます。これも面接での印象を悪くする要因です。

現場では、褒めても叱っても変わらない人も多く、最終的には「自分で考えて動けるか」が問われます。つまり、「刺激を与えられないと動けない人」と思われてしまうリスクがあります。

【長所・短所の答え方】
長所は具体的かつ職能に即した内容で、自信を持って述べましょう。「人の話を丁寧に聞ける」「行動力がある」など、実例とともに提示できるようにしておくと有効です。一方、短所に関しては、業務に致命的な影響を与える内容を避け、改善への取り組みも合わせて説明する工夫が必要です。

例えば、「短所は完璧を求めすぎて作業時間が延びてしまうことです。ただ、最近は期限を意識して優先順位をつける練習をしています」といった答え方であれば、前向きさを伝えることができます。

また、短所を述べる際には、あくまでも「成長の余地がある点」と捉え直し、どのように自己改善に取り組んでいるかを示すと、積極的な印象になります。


面接は、自分という人間を正確かつ魅力的に伝える機会です。しかし、少しの油断や言葉の選び方ひとつで、「一撃不合格」に直結してしまうことがあります。ここで挙げた「言ってはいけない言葉」や態度を意識して排除することで、より誠実で戦略的な自己表現が可能になります。

合格する人は、相手の目線で自分を語れる人です。そしてそれは、自分自身への理解と、志望先への真摯なリサーチがあってこそ成し遂げられるのです。面接は運ではありません。準備の質と深さが、合格の可能性を大きく左右するのです。

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井上博文
専門家

井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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