研究計画書作成での最初の躓き

井上博文

井上博文

テーマ:実は難しい研究計画作成方法

11月も半ばになりました。そろそろ2月までの入試に向けて、研究計画を組み立てていく時期になってきました。研究計画をたてる際に、まず私が最初に言うことは、「料理のレシピ≒研究計画」ということです。研究計画とレシピは構造的に大変似ています。この点についてはこれまでも何度も述べてきました。

ここでは研究計画作成の際、最初の躓きとなるところをいくつかあげます。まずは、先行研究探しとその読解です。先行研究を押さえておくことは、研究計画作成にあたって必須になります。しかし、中には英語の文献しかないものもあって、論文自体を探すのも、見つけてから読むのも大変な手間がかかることもあります。京都コムニタスでは、教員が一緒に読んだりすることもよくあるのですが、いずれにしても、入手から考えても相応の時間がかかります。ですから、かなり早い準備が必要です。

次に
大枠のテーマ設定でも躓きます。何となくテーマを選ぶ場合と、全くテーマが浮かんでこないという場合があります。テーマ設定のアイディアが全く浮かんでこないという人は、自分の経験をテーマに選びがちです。
これは必ずしも悪いわけではありませんが、注意が必要です。特に、自分自身を研究したいというパターンは避けましょう。また、意外に多いのが、興味があまり持てない分野を選ぶ人です。つまり、大学院合格のためには、大学の先生に合わせることが近道だと勝手に想像して、本来研究したかったことを外してしまうのです。もちろん、これは良くありません。大切なことは「行きたい学校に行って、やりたいことをする」です。やはり自分が何をしたいのかということを、明確にした上で、テーマを絞りこむのが理想です。そのためには、私はよくテーマ選びで困っている人に外せないキーワードを20個程度出してくださいと指示します。その傾向をみると、だいたい何がしたいかが見えてきます。自分が何がしたいかが見えないことが一番大変ですので、まずそれを知るためのキーワード設定と考えてください。そのうちに外せるキーワードもでてきますので、徐々に「どうしても」外せないキーワードを設定していきます。そうしてキーワードを絞り込んでいくことで自分のこだわりがみえてきます。それが定まれば、論文を探すことも容易になってきますし、論文が探せれば、疑問も出てきますので、良い循環が生まれます。しかし、キーワードを設定するには、やはりそれなりの情報かあるいは何らかの経験が必要になってきますので、結局のところ関心幅が必要ということになります。当塾では、とりあえず、キーワードを並べてもらって、私がいろいろ質問しますので、それに答えていってもらえれば、徐々に煮詰まってきます。その上で、また論文を探し、読んで、さらに煮詰めるという作業を繰り返していくことで純度を高めます。

次に躓きやすいのは、
研究計画書を大学院の先生が見たときに、必ずといってよいほど、思われることがあります。それは「何がしたいのか」ということです。この「何がしたいのか」というフレーズは永遠のテーマです。しかし、これを読み取ってもらわなければ、研究計画は合格とは言えません。少なくとも自分なりに何がしたいのかを伝えられない状態から脱しておきたいところです。この何がしたいのかという問いに答えることは実は結構難しいことです。しかし、大学院の教員は言えて当たり前と考えています。つまりこの部分を研究計画の分かれ目の一つと考えているということです。この「○○がしたい」と言えるものを作るには、疑問詞を明確にするとうまくいきます。「なぜ」と問うと、理由を問うことになります。「いつ」「誰」「どうやって」などなど、うまく疑問詞を駆使して、問うてみたい疑問を設定し、その疑問に答えてみたい。そして答えを裏付けるための証拠になる情報を集めたい。これがいわゆる「してみたいこと」です。これは苦労しますが、早めに作っておきたいところです。そして情報量を多くしてから、質のよい疑問を設定することが重要です。現時点では多くの生徒が疑問を出すことに四苦八苦しています。でもこれを乗り越えれば、あとは結構スムーズに進みますので、産みの苦しみといったところです。


私はどの人にもとにかくまず相談に来るように言っています。初動で躓くと、時間だけが過ぎてしまいますので、早く持ってくることが大切です。
まずは、どんなキーワードを持っているかを見せてもらうと、その人の興味の傾向がわかります。私たちがまず心がけることはそれぞれの人が何に、どんな興味を持っているか、またそのキーワードに興味を持ったきっかけを聞きます。そうすると、「何がしたいのか」が少しずつ見えてきます。以前、いじめ関連のことがしたいかも、と言いながら、持ってきたキーワードを見せてもらうと、ほとんどいじめ関連のキーワードはなかったため、よく話を聞いてみると、全く違ったキーワードが出てきました。他にも「居場所作り」に興味があるというところに立ち位置が固まってきた人は、論文を読んで多くの人が、いろいろ言っている居場所の定義をまとめるところまで進んでいます。
一口に研究計画と言っても多種多様です。
例えば「サポートブックを作りたい」といった、「何かを作りたい系統」のものもあれば、「情報収集がしたい系統」「何かを究明したい系統」「これまでの理論を検証したい系統」「援助を検討したい系統」「(例えば母親の)苦しみを形にしたい系統」などなど、たくさんの系統があります。

自分がどんな系統なのかは、あとで考えるとして、この時期にまずしておきたいことは、外せないキーワードと、素朴な疑問、そして、それを使って検索した論文と、それを読んで、さらに感じた疑問です。まずはこの積み重ねが必要です。これを何度も何度も繰り返していくと必ず光明が見えてきます。何事も地道な積み重ねが必要と言いますが、この時期、焦る気持ちを抑えながらの地道な作業が、そのまま大学院の修士論文になるという人もたくさんいますし、それが一生の仕事になるという人もいます。じっくりと練り上げていくことをイメージしましょう。


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井上博文
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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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