オンラインでの公認心理師現任者講習会
心理職大全を出すに当たり、70を超える多くの心理系大学の先生方にインタビューを受けていただきました。私は、常に強い関心を持っているのは、「心理職は食べていけるのか」「どうやれば食べていけるのか」です。それ以外のインタビューの質問項目に、先生方がとても答えにくいであろう、「これからの臨床心理士と公認心理師」に関するものがあります。両資格の決定的な違いは、職域ではなく、前者が民間資格で、後者が国家資格だということです。京都コムニタスには、看護師の方もよく来られますので、国家資格保持者と出会う機会はいくらでもあります。ただ、看護師や医療従事者の資格は、民間資格でほぼ同じ職域の資格があるわけではありません。看護師の資格が創設される前に、民間で有力な看護の資格があったという話は聞いたことがありません。だから医療者になるには、国家資格は取って当たり前の資格で、なければ医療現場で働くことができないと言って過言ではありません。そんなこんなで正直国家資格の威力をわかっていませんでした。
看護師は、看護学校や大学を出て、卒業と資格取得はほぼ同時期になりますが、同時に就職も決まります。ほとんどにおいて最初から常勤職になります。医療従事者の国家資格で、初任は非常勤で、いろいろ経験を積んでから常勤を目指す・・という話は、私の知る限りにおいては、ほとんどありません。むしろ、常勤にならないのなら、そんな学校に来るな、という空気さえありますし、「年齢の壁」がよく言われるのも、常勤就職をすれば定年があるわけですが、例えば、50歳で看護学校に入ったとして、3年かかって卒業し、さらに一般に3年で一人前になるとされますから、合計6年、その頃には定年が見えます。これが年齢の壁の正体で、50歳前後の人が受験に行くと、面接会場で、これをよく言われます。それだけ、医療従事者の中では、非常勤で働くという考えがあまりないのだということがわかります。
その意味では、心理職で多いのは、最初は非常勤で経験を積んで、その後、常勤を目指す人と、そのまま非常勤を掛け持ちしていく人とが大半であろうと思われます。その意味で、国家資格としては心理職は特殊な部類に入るということは、公認心理師が創設されたことで際立ってきました。私は臨床心理士のこれまでの実績をリスペクトする立場で、これまでもこのコラムでそのように書いてきたつもりです。
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ただ、現実として、インタビューを進めていても感じることとして、臨床心理士という資格の明るい未来を描くことは難しいというのが、偽らざるところです。それが当然の流れになっているのは、やはり公認心理師が国家資格だということが大きな理由です。特に大学受験のために進路を考えている方々は、臨床心理士の実績はそれほど響かなくなりつつあり、国家資格の方が「上」という見方をしている人が増えているようです。また、大学院を出て、1年のうちに二つの資格の試験を受けるのは負担が大きいので、どちらかに絞る人が増えていることもあるようですが、その大半が公認心理師を選んでいるようです。言い方を変えれば臨床心理士の受験を回避しているということです。コロナ禍も大きな理由だと思います。臨床心理士は、東京まで受験に行かないといけないわけですが、コロナ禍にあって、これが地方の大学からすると大きな負担です。しかも面接も東京ですから、その負担の大きさは枷になるのではないかと思います。公認心理師は、1回で、しかもある程度近いところで受験できる確率が高いですから、一つに絞る場合、やはり総合的に公認心理師になるのは全く妥当な話です。このようにこれからしばらくは、臨床心理士と公認心理師は選択されることになると考えられます。そして圧倒的に国家資格である公認心理師が有利になっています。臨床心理士側の工夫がいる時期ではないかと思うのですが・・
第7回試験からは、おそらくは、年度内に公認心理師試験が行われます。すでに予測されていることではありますが、在学中に就職が決まっても、公認心理師試験に不合格になると、内定が取り消しになる可能性が生じています。他の国家資格では、珍しいことではないと、別府大に行ったときに伺いました。おそらくは公認心理師もその道を辿ることになるのでしょう。仮に2月に試験があって、卒業までに合格発表が行われるようになると、国家資格の公認心理師の試験の形が、他の医療や福祉の国家資格と同じような形になることが確定されていきます。そうなると、臨床心理士の資格がどうなっていくのか。私にもやはり明るい未来は見えていません。
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