公認心理師の義務と倫理

井上博文

井上博文

テーマ:公認心理師になるには

公認心理師法第4章に義務等が記されます。
第40条が信用失墜行為の禁止、第41条では秘密保持義務、第42条では連携等、第43条では資質向上の責務。以上の4項目があります。
第40条「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない」
とありますが、これだけですので、具体的にどのような行為かということについては記されていません。第44条の名称の使用に関することも含まれるでしょう。広く解釈できますので、必ずしも違法行為だけとは限りません。
第41条の秘密保持義務には罰則規定が第46条にあり、「第41条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」とあり、「2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」ともありますので、問題の当事者からの申告によって訴訟が起こされることが想定されます。
第42条の連携については、以前書きました。
こちら
公認心理師の他職種連携②
公認心理師の他職種連携③

第43条は「公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」
とありますので、第2条を見なければなりません。第2条は定義です。

「この法律において「公認心理師」とは、第28条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
1心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
2心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
3心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
4心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

これらに関する知識、技能の向上に努めることが義務です。いずれ、免許更新制度を作ることを視野に入れているのかもしれません。


法的義務は基本的には「最低限度」のことになります。しかし、職業倫理は、そうとは限りません。倫理とは要するにしていいことと、してはいけないことと言えますが、基本的に個人の問題です。しかし、職業倫理となると、その職業の性質が関わってきます。
現任者講習のテキストによれば、「職業倫理的な責任」と「相手を利己的に利用することの禁止」という項目が設けられています。
例えば秘密の保持にも、法的なものと、職業倫理的なものがあります。法的な秘密保持は、秘密にしておくこと自体に利益があると想定される場合に適用されます。一方で、職業倫理的な秘密保持は、専門職は、罰則の有無にかかわらず自分を信頼して秘密をあかしてくれるクライエントを裏切らないように秘密を漏らさないことを指します。その意味において、職業倫理的秘密保持の方が幅が広くなります。
公認心理師の場合、教育や訓練、経験に基づく、専門的な能力を持っていることも重要です。ただし、幅が広い資格ですので、全方位的に能力を持っていることは不可能ですので、特化した専門分野を持ち、その能力を向上させておくことが求められます。そのために常に研鑽を積んでおく必要があり、第43条では資質向上の責務がありますので、義務でもあります。
また自分自身の利益や欲求のために援助を行なってはいけないというものもあります。特に多重関係については注目すべきです。例えば心理師が、クライエントとの関係だけではなく、友人関係であったり、先生と生徒という関係になるということです。この場合は、心理師、クライエントの関係は作らない方が良いのかもしれません。
最後にインフォームドコンセントの問題があります。これは心理職に限ったことではありませんが、専門職がしっかり説明した上で、クライエントや患者の立場の人が選択をするというものです。説明が不足しているということはあってはなりません。


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井上博文
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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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