適者生存
2017年に安全と安心の違いというコラムを書きました。かれこれ2600回以上、コラムがたまっていますので、もう忘れていたのですが、知り合いのメディアの人が「井上さん、4年も前から今の状況を予見していたのですね」と言われ、何のことですかいな?と聞くと、このコラムのことを言われました。
この時は、現東京都知事が築地の豊洲移転問題で、大活躍をしていた時の、「安全、安心」という言葉に考察を加えたものです。基本的な考え方は変わっていません。
思えばこの時以来、いまだにこの知事がいるのだということに衝撃を覚えますが、この知事のもとで東京オリンピックが開催されるのは、この国の不幸の一つです。しかし、人災的不幸があまりにも多すぎて、どうすることもできませんし、こういった人に投票した人も「他よりまし」で投票せざるを得なかったのでしょうから、不幸の根元は、もっと深いところにあるのだと思います。
安全と安心という言葉は、言わずもがな、オリンピックに政府が冠としてつけているものです。こう言っていれば洗脳できると思っているところが、浅はかですが、意図的な浅はかさの怖さは前政権から見事に引き継がれています。普通の人間は、浅はかであることを恥ずかしいと思うし、自分の発言や行動が浅はかではなかったか、ということに一定の振り返りと反省をして生きていくように習ってきましたし、科学の発展はこの姿勢のないところにはありません。だからこの国は、ワクチン後進国になったのだと考えています。
「予見」と言われてもう一つ思い出したのが、ほぼ1年前、いずれ使うだろうな、とブックマークしておいた記事がこれです。この根拠薄弱な1年延期、根拠なき国産ワクチン開発の見通し・・・もはや誰も言わなくなり、すっかり忘れてしまった「布マスク配布」。これについては検証もしないそうです。根拠なき思いつきのテキトーな判断能力の人間が、自分の犯罪を有耶無耶にするためにこの国の政治に7年以上も居座ったことが、この国の最大の不幸であり、悪夢です。いまだに犯罪者が出ており、さすがの検察も裁判所も実刑を出さざるを得なかったくらい大きな犯罪を犯した人を輩出した政権です。
そこに輪をかけるように、「東京アラート」(もう忘れていると思いますが)なるお遊び感覚のふざけたライトアップ。こんなふざけた人間たちが決めたことに、今、この国が突き進んでおり、そのキャッチフレーズが2017年と同じ「安全、安心」を「危険と不安」しかないこの状況下で、かわりばえのしない人々が言っているのです。
私たちは科学の中に身を置き、データと証拠、根拠で物を言うように習ってきた人間です。それを日々塾生に伝えています。また科学は問いから始まります。証拠もデータも出さず、問いにも答えないという価値基準を知りませんし、そんなものが世の中で通用するのだということを今、まざまざと見せつけられています。よい子は真似してはいけませんよ、と教育現場は学生に言うべきでしょう。
今、オリンピックを開催するのは、賛否両論あるに決まっています。私個人は何度も言っていますが、開催して欲しい派です。もちろん「できるなら」というただし書きがつきます。しかし、感染症の素人が開催できるともできないとも言えませんから、専門家の言うことを信じます。知り合いの医師は感染症の専門家なのですが、私がぜんそくを持っていることを言ったら「今の医学ではぜんそくは感染症だよ」と言われ、私の場合は、アデノウイルスではなく溶連菌が悪いと予測され、「だとしたら抗生物質が効く」と言われ、処方されたものを飲むと、長年気管拡張剤を持たずに出歩くことができなかったのですが、この十数年まったく持つ必要がなくなりました。子どもの頃は気合いと根性で治す(いつの間にか消える)しかなかったのですが、今ではそれが完全な治療法とは思うなと言われているものの、安全、安心して外出ができます。
専門家とはそういうもので、私たちは専門家の言うことで安全、安心を体感することができます。もちろん、信頼のおける専門家ほど、慎重な姿勢であることは言うまでもありません。
上で書いたような政治禍の言うことは「危険と不安」しか生みません。オリンピック開催を反対する人の多くは、この「危険と不安」があるから無理だと考えているわけです。オリンピック自体が嫌いな人はそこまで多くないと思われます。
政治禍は、与党だけではありません。野党も同じです。「オリンピック中止、もしくは延期を求める」と恥ずかしげもなく言っている段階で、与党に決めて欲しいわけですから、政治禍一味です。
大事なことは、そんな馬鹿なことではなく、開催するにせよ、しないにせよ、いずれにしてもそうだと言えるだけの基準とそれを決めたデータと根拠です。それを議論して、多くの国民に問いかけ、最後は多数決かもしれませんが、いずれのデータも一定の説得力があるはずなのです。その説得力こそが「安全と安心」につながることは、本来言うまでもないことなのです。
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