第4回、第5回公認心理師試験でGルート(区分G)の人が合格するには

井上博文

井上博文

テーマ:公認心理師試験対策

第4回試験でも1万人以上のGルートの受験者がいると見込まれます。コロナによる受験回避の方も含めると、2万人近い潜在受験者がいると思われます。周知の通り、Gルートでの受験はあと2回です。受験できる可能性のある人は、早めに調べて、資格審査書類の整え方を知っておきたいところですし、最後の現任者講習も早めにチェックしておきましょう。

公認心理師試験は、要は本番の試験で6割を取れば合格ですので、合格率はそこまで個人の合否にとって重要な情報ではありません。それでも合格率50%程度であることを思えば、2万人程度いると予測されるGルートの方々の半分程度が不合格になるという見方になり、第5回試験後は、この方々は公認心理師になるには、また学部から単位を取り直す必要があり、事実上かなり難しくなると言わざるを得ません。残り2回ですので、第5回試験が最初で最後のGルート受験になる方も含めて現実のこととして考えておく必要はあります。
合格点の6割は少なくとも第5回試験までは維持されると考えられます。配点もおそらく変わらないと思いますので、事例が3点というウエイトに賛否はありますが、少なくとも当面は138点を目指すということになります。

やはり基礎ができているかどうかが合格のポイントであることに間違いはありません。しかし、Gルートの方々は、基本的はには心理学を専門に学んできていない人と言えますので、冷静に考えると、Gルートの明確な勉強方法は確立されていません。最近いただくお問い合わせの多くが、第4回試験が初めの受験で、心理学未経験という方です。私など専門は仏教学ですから、文字通りゼロから始める心理学と公認心理師試験対策ということになりました。
第1回、第2回試験は基本的に臨床心理士、つまりDルートの人が受験することがメインでした。第3回からフェーズが変わり、Gルートが中心になりました。あと2回限定でGルートのための合格戦略がいるということです。

ということで、次回から私個人の経験がもとになりますが、Gルートで心理学門外漢のゼロから合格戦略について書いていこうと思います。

このコラムは、あくまでGルートの人があと2回の試験で合格に達するにはどのような戦略を描くのが良いのかについて述べるものです。現場で働くことを考えれば、当然確固たる知識が求められるわけですが、まずは資格を得ることを考えることも大切なことと考えています。

Gルートの多くの人は、心理学を大学や大学院で専門的に学んできていない人です。医師、看護師でさえもそうですが、学校の教師、精神保健福祉士、作業療法士、理学療法士といった立場の確立した資格保有者も多数おられます。こういった方々は、多少問題が重なるところもありますし、国家試験受験経験を持っていることもありますので、勉強方法はある程度わかると思います。一方で国家試験を初めて受験するという人もおられ、こういった方々は、何から勉強をすればいいかがわからないという現象が起きやすくなるのは否めません。

公認心理師試験の特徴は、「幅の広さ」です。ここまで北海道試験をいれて、4回の試験があったわけですが、はっきりしてきたのは「無理なものは無理」という問題が一定数あるということと、どれを「無理」と思うかは自分の専門分野によって異なってくるということです。私見ですが、病態生理、薬理、脳機能などの問題は、その分野に関わったことのある人でないと半年くらいの勉強期間で、この分野をマスターするのは至難です。
例えば問30 甲状腺機能低下症にみられる症状について、正しいものを1つ選べ。
という問題がありましたが、私は ③眼球突出を選びましたが、方々から「それ一番選んだらあかんやつ」とツッコまれました。それバセドウ病やでと、知り合いの医者から言われました。「違うの?」「だって甲状腺機能低下症って書いてあるやん」「たまに医師国家試験でも間違う人いるらしいな(冷笑)」「医師国家試験でもでるんや」「サービス問題やけどな(冷冷笑)」「どう違うの?」「ウィキペディアでもみとき」「・・・」
この問題の正解は④ 傾眠傾向です。私の場合、半端な「聞いたことある的」知識がマグレ当たりさえ許さなかったというパターンです。その医師に、「公認心理師試験にこんな問題関係あるの?」と聞くと、「そりゃあるよ」との返答。私のような素人からすると、ものすごくニッチな問題に見えますが、見る人が見ると「基本問題」になるということです。今回気付いた公認心理師試験の新たな特徴として、このようなパターンがあるということです。第4回試験で「甲状腺機能低下症は前出たし、こんどはバセドウ病を勉強しておこう」という姿勢は、6ヶ月では無理があるように思えてなりません。
同じ現象は問133 高齢者に副作用の少ない睡眠薬として、適切なものを2つ選べ。
① バルビツール酸系薬剤
② フェノチアジン系薬剤
③ オレキシン受容体拮抗薬
④ メラトニン受容体作動薬
⑤ ベンゾジアゼピン受容体作動薬

こんなことを言うべきかどうかわかりませんが、私はこれは考えませんでした。一つでも合うかどうかわからないのに二つ合わせるのは不可能という判断で、「時間の無駄」と思ったからです。正答を見てもイメージできませんし、現物を見たこともありませんし、多分入手不可能です。もはやネットで検索してもいません。さすがにこれはその医者でも「これは医者しか無理やなあ」「僕らやったらサービス問題やけどなあ」と言っていました。「医者ってすごいなあ」「薬理の知識は当たり前やろ」ということでした。

だとすると、やはり残り期間で考えると、このようなテーマはできる人にはたいしたことのない問題と思える人が点数をおとさないようにするものと割り切り、自分の得意な分野を確立することを優先して、確実に点数を落とさないテーマをもつことが大切だと考えています。門外漢は、この分野を持っていないという点が不利になるのだろうと考えています。
ただし、この場合、公認心理師法や職責は除外されます。これはどの分野の人もスタートラインは同じですので、勉強すれば確実に誰でも取れます。これに加えて自分の得意分野を作りましょう。

Gルートで、心理学を専門としない人が合格するには、「無理な問題は無理しない」「得意分野を作る」「「公認心理師法」「関係行政論」の習得」。これが基本で、138点以上を取ることが目標で、150点や160点、まして200点以上など目指さなくても良いということです。

公認心理師法と関係行政論は専門分野は関係ありませんので、誰でも勉強をすれば取れます。またそれほど難しいものでもありません。ただ、法律を見たことがなければどうにもなりませんので、まずはこれらをしっかり勉強しましょう。
次にこれは以前から言っていることですが、日本語力の錬磨の重要性です。例えば第2回試験問2

統合失調症のデイケア利用者Aについてのケア会議で、スタッフBが「Aさんは気難しく、人の話を聞いていないので関わりが難しい」と発言した。Aには幻聴がある。
会議の中でBの発言に対する公認心理師の対応として、最も適切なものを1つ選べ。

この問題は選択肢次第の問題ですから、選択肢の日本語を正確に読まなければなりません。
主語は公認心理師です。
①スタッフに交代を提案する。
→それはないでしょう。提案をしてどうなるかを考えてみることも大切です。
②専門職に困難はつきものであると諭す。
→もちろん、これもないでしょう。諭してどうなるかを考えると、意味のない発言です。
③幻聴についてどの程度知識があるかを質問する。
→幻聴のことだけ知識があっても・・やはり違うでしょう。それを質問して、どの「このくらい知識があります」と言われても、問題文は「関わりが難しいこと」がテーマです。問題文から外れていることに気付きます。
④どのような場面で関わりが困難と感じるかを質問する。
→これは問題文と照合すると、情報として必要です。また共有すべき情報でもあります。
⑤関わりを拒否するような態度は正しくないことを指摘する。
→これを指摘したら、どうなるのかがよくわかりません。確かに「関わり」というワードが重要なので⑤も考慮対象にはなりますが、「正しい」「誤っている」を指摘しても、個人の価値観にすぎないこともありますから、少なくとも試験問題に個人の価値観を押しつけるようなものが正答になることはほとんどないでしょう。
したがって④が正答でしょう。これに限りませんが、第3回試験でも日本語力メインで解ける問題は実は結構たくさんありました。事例問題はよりその色が濃くなります。遠からず、日本語力で解ける事例問題をピックアップしたいと思っています。また公認心理師は法律に拘束される上、関係行政の幅も広くなっており、法律の知識を豊富に持っておく必要があることは、何度も指摘してきました。法律文は高い日本語読解力を要しますので、問題作成者もそのあたりを意識しているのだろうと思っています。

今、多くの方々から第4回試験と第5回試験に向けた講座のお問い合わせをいただいております。私たちもいつもよりわかりやすく質の高い動画を収録することを心がけています。また模擬試験も、昨年はかなり的中したという評価をいただきました。今年も的中するかどうかはともかく、「今の実力を知る」という事以上に、皆様にとって、勉強になる模擬試験というコンセプトは崩さず、作っていく所存です。
当塾にお問い合わせいただく方のほとんどは、当塾の教材についてのお問い合わせになりますので、私としても精一杯説明させていただきます。たまに「他にいい教材や本はありますか?」と聞かれるのですが、「知りません」と言いたいところですが、そうもいきません。本当にそんなに知らないというか、どの教材が良いのか、という目ではあまり見ず、「○○には有効」という目で見ています。総合的には「是非京都コムニタスの教材と模試を」と言いたいところです。
私個人はもちろん、当塾のもの以外では勉強せず、門外漢の私がが実験台になって、その効果性を検証しました。コンセプトは、全科目対応していて、心理学未経験者であっても、当塾の教材だけで完結し、合格できるというものです。当塾の歴史の中で、最も多く来られたのは、臨床心理士指定大学院受験で、心理学の未経験者です。この人たちにいかに合格してもらうかを、基本課題としてやってきましたので、そのままのコンセプトということです。

当塾以外のもので、参考にすべきものは、まずは「必携テキスト」かと思います。これを書かれた先生も第1回試験の時から公認心理師像をしっかりつかんでおられ、今は第2版ですが、基本構造は崩さず、かなりパワーアップしています。一冊で全体像がつかめる本は意外と少なく、文字通り必携です。ただし、重量もパワーアップしています。私たちの教材同様、本試験の日に必携するのは難しいかもしれません。本試験の会場で多くの人が見ていたのは、実は電子書籍を見ている人はほとんどおらず、紙の本で薄型のものが大半でした。当塾の肢別ドリルを持っている人もたくさんおられました。一問一答形式は一定の訓練になりますので、全体像が見えてきたら、このようなドリル形式の問題集を使うのは合理的です。
日常の勉強で、まだ時間がある方は、分野ごとに一冊ずつ出版されているものがありますが、こういう一貫性のある編集をされているものは、その編集方針が間違っていない限り有効です。言い方は悪いですが、大学の先生が書きたいことを書いて、読者が公認心理師試験に合格するかどうかを意識していないシリーズもあります。これは内容が悪いわけではないのですが、読者層をどこにおいているのかが、理解されていないケースです。今の学部生が読むには良いでしょう。けれど、第4回試験に合格するには、少し違うかもしれません。私たちのような塾が作る教材は、次の試験に合格することを目標に作りますから、短期間で全体像をつかみ、かつ本試験の問題に対応できるという条件設定で作っています。このあたりを意識して教材を選びましょう。


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井上博文
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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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