第4回公認心理師試験対策としての「自分に合った勉強方法」の獲得

井上博文

井上博文

テーマ:公認心理師試験対策

ベタな表題ですが、最近、第4回公認心理師試験に向けたお問い合わせをたくさんいただいております。精神論を言えば、いっぱい勉強しましょう、となりますが、過去問やブループリントを見れば見るほど、幅の広さに圧倒されるのですが、私自身の経験からすれば、方法さえ間違えなければ「何とかなる」と思います。ただ、「自分に合った方法を見つける」が必要なのです。少なくとも第5回試験までは、自分に合った方法を見つけられた人が合格に近づくと思います。

私たちとしても、ここまで経験を重ねてきて、それなりに知見ができましたので、どんどんお問い合わせいただきたいと思っているのですが、やはり、お問い合わせいただく大半の方々は、社会人でGルート受験をお考えの方です。職種として多いのは学校の先生か、医療関係者の方です。幸い、当塾には公認心理師がたくさんいますので、個別の質問にはしっかり答えさせていただいております。
とはいえ、この公認心理師試験対策としての勉強は、大変難しいものです。第2回試験以降、正確な知識が問われると、試験に弱い人は実力が出せないということもあるでしょうから、ある程度長期プランの対策が必要であることは明らかです。また日本語力と気合いと根性だけでは合格には届かないということも明らかになってきました。第3回試験が終わって、問題をよく見て思ったのは、問題の設計が非常に綿密になされていることです。文科省か、厚労省のいずれが作るのかは、審らかではありませんが、日本が様々な試験で伝統的に行ってきた手法がふんだんに活かされている試験です。そのため、日本語力と気合いと根性で、合格には届かないものの、2割から3割程度は見込めると思います。
しかし、あとは、そう簡単には6割に届かないようになっています。特に、「医師(それぞれの分野の専門職)でもなければまずわからないであろう問題」があります。それから、「多分誰もわからないであろう問題」も一定数あります。一方で、気合いと根性では無理ですが、単語の知識だけでも解けそうな問題も一定数ありますが、やはり合格には届かないと思えます。
それでも、バックボーンにもよりますが、しっかり集中的に勉強すれば1年以内に合格することは可能なのではないかと思います(ただし、第4回試験までには1年どころかあと6ヶ月程度しかありませんの要注意です)。

また、今明らかになりつつあるのは、国側が求める公認心理師像です。それはやはり臨床心理士とは異なるもののようです。ですから、やはり法律の知識は必須になります。加えて、心理学の基礎の知識、テストの知識、事例の読み解きによる複合的知識の駆使。このあたりができれば概ね合格点に届くように思えます。
では、具体的にどんな勉強方法を取ればいいのかについて考える必要があります。次回テストは9月予定です。残された時間は少ないため、誰でも言うことでしょうが、やはり合理性や効率性が必要です。それには適切な情報が必要です。教材は是非、当塾のものを、と言いたいところですが、当塾の教材は全科目に対応しており、可能な限り最新情報を盛り込んでいます。品質の高さは誇りとするところです。
それとは別にまず無料で入手できる教材は過去問とブループリントです。最新のブループリントは、まだでていませんが、過去の試験から見ても、半年前くらいには出るのではないかと思われますので、2月12日の合格発表後、遠からず出ると思います。ただし、そこまでダイナミックな変更はないでしょうから、むしろ、今までのブループリントをしっかり見ておくことが大切です。新しいものが出たときに「違い」がわかるくらいになっておくことが必要でしょう。現任者講習テキストは、いつも強調されることではありますが、試験対策用ではありません。特に第2回試験以降は、現任者講習テキストでは対応はできないと思います。しかし、第4回試験が初めての受験になる人は、やはりこのテキストは見ておくべきだと思います。最新の現任者講習テキストは、第1回試験の問題とブループリントも掲載されており、これが一冊あると、試験の全体像を俯瞰するには適していると言えます。ただし、これだけでは合格には届かない可能性が高いでしょう。それでも全体像を俯瞰する作業は非常に重要です。それによって何が問われるのかがある程度わかります。正確には相手方が何を問いたいのかがわかるということです。そのため、より詳しい全体像がわかるテキストがもう一つ欲しいところです。
①過去問分析②現任者講習テキストで全体像の把握③できれば当塾の教材と模擬試験でさらに詳細な全体像の俯瞰をすると、かなりイメージができてくると言えます。またそこから、自分が何をどう勉強すれば良いのかの計画がたてやすくなると考えられます。
あとは「基礎」が何であるかを自分でつかめるようになることが必要です。公認心理師試験における基礎が何かは、とても難しいところです。今のところ、「広く浅く」というイメージでしたが、少しずつ変わってきています。自分で基礎ができたと思えるようになることも意識しておきましょう。

ここまで合計3回の試験がありましたので、少しずつ勉強方法は確立されてきたと思います。京都コムニタスは第1回試験以前から教材作りや模擬試験を作ってきましたので、かなりの蓄積ができました。第4回試験の正確な日程、ブループリントもまだ発表されていませんが、これまでもだいたい半年前には出ましたので、今から想定すると9月後半くらいかと思われます。第4回は延期の可能性は低いですが、感染症対策を考えると、密にならない会場を要しますので、調整に時間がかかっているのかもしれません。

公認心理師試験を受ける人は、現任者講習を受けた人と、そうでない人にまずはカテゴリーが分けられます。講習を受けた人は、テキストを見ると、かなり多くのヒントがあると思います。講習を受けていない人は、その多くは臨床心理士でしょうから、心理学についてはアドバンテージがあると思います。講習を受けた人も受けていない人も、共通して学んでおかねばならないのは、公認心理師法です。当塾の講座で言えば「公認心理師法系」「公認心理師の職責」になりますが、例えば、公認心理師の守秘義務の場合、臨床心理士と必ずしも同じとは言えないのは、公認心理師はより法律に拘束されますので、関連法と合わせ技で考える必要があります。だから、児童虐待防止法との関連で判断をしないといけないということもあります。このように複数の法律を有機的に関連させて理解することを意識して勉強を進めていきましょう。

このコラムでも触れましたが、今は教員の方の受験が多くなっています。いずれにせよ、まずは、自分の今の仕事などを考慮して、得意な分野とそうではない分野があると思いますので、得意な方から勉強するか、苦手な方から勉強するか、方針を決めていくところから始めましょう。
ただし、これも何度か書いたことですが、どのような状況であっても、特にGルートで受験する人は、まずは心理学の知識を意識して必要があります。心理学を始めたばかりの人は、まず、その巨大さに圧倒されます。何から勉強をしたらいいのかがわからないという状態になりがちです。そこでまずはブループリントを見ることが望ましいでしょう。

④ 心理学・臨床心理学の全体像 約 3%
⑤ 心理学における研究 約 2%
⑥ 心理学に関する実験 約 2%
⑦ 知覚及び認知 約 2%
⑧ 学習及び言語 約 2%
⑨ 感情及び人格 約 2%
⑩ 脳・神経の働き 約 2%
⑪ 社会及び集団に関する心理学 約 2%
⑫ 発達 約 5%
⑬ 障害者(児)の心理学 約 3%
⑭ 心理状態の観察及び結果の分析 約 8%
⑮ 心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助) 約 6%
⑯ 健康・医療に関する心理学 約 9%
⑰ 福祉に関する心理学 約 9%
⑱ 教育に関する心理学 約 9%
⑲ 司法・犯罪に関する心理学 約 5%
⑳ 産業・組織に関する心理学 約 5%

この割合はいつも同じですが、そのままだとすると、70パーセントを超えてしまいます。また、それぞれの分野も幅が広いので、2パーセントの部分をどうするかは、各自の考え方次第です。そう考えると、残り時間で効率よく勉強する方法と、それに適した教材が必要ということになります。是非、京都コムニタスの教材をと言いたいところです。『公認心理師試験 これ1冊で! 最後の肢別ドリル 改訂版』もおすすめしたい一品です。心理学系の問題は、前回とは内容が一新されていますし、法律の問題は、その分野にかけては天下の辰巳法律研究所の手になります。

また心理学関連と言えども、ブループリントを詳細に見ると、心理学だけ限らない分野のものもあります。ここが公認心理師の本領と言えますが、公認心理師は、チームというコンセプトを重視しており、心理学という観点で、様々な領域につながっていく、あるいはつないでいく役割を担うのだと思います。例えば、⑰福祉に関する心理学はそのカテゴリーと言えます。福祉の現場には、心理職だけがいるわけではなく、福祉職の人々がむしろ中心です。心理職が、福祉の現場に入っている事例としては、児童福祉分野と精神保健分野が主とされています。現任者講習のテキストにも少し触れてありましたが、これからは高齢者福祉、障害者福祉、地域福祉の分野で心理職が活躍することが期待されています。となると、この分野の法律はしっかりおさえておきたいところです。
しかし、一方で福祉の基本も押さえておきたいところです。臨床心理士が福祉の分野に入りにくい理由としては、臨床という言葉と福祉という言葉にどうしても重ならない部分があるということが挙げられます。臨床は個人、すなわち〇〇さんに対して、その人個人の問題解決を一緒にしていくことです。風邪をひいて病院に行って、保険証を出して、医師に診てもらい、薬をもらって帰ることをイメージしていただけれると、臨床は比較的簡単にイメージできます。一方、福祉は、日常的にそれに出会う人と、そうでない人がいますので、イメージしにくい人も少なくありません。福祉は、個人に対する支援という意味は、臨床よりは少なくなり、公共が決めたカテゴリー、例えば「○期高齢者」などを対象として、個人が援助するというよりは、公共が援助をするという意味合いが強くなります。また、福祉の場合は、環境調整も必要です。このあたりは、家族療法は近接になるようにも思えます。さらに、地域福祉は、心理学では最近は「コミュニティ心理学」といった言い方もありますが、対象範囲は、大きくなると市区町村、小さくても学校やその校区地域という大きなカテコリーになります。このあたりは、いずれ、公認心理師が、心理の分野と、福祉分野と、社会健康医学分野、公衆衛生などの分野をうまくつないでいく役割を期待されていると考えられます。

その意味で「連携」「チーム」は現任者講習でもかなり強く強調されるキーワードです。チーム医療が行われるようになって随分時間がたっていますが、これは患者のためでもありますが、医療従事者のためでもあります。特に「生物-心理-社会モデル」は重要ワードです。また最近は、教育分野でも「チーム学校」といい、他職種連携の必要性が言われます。以前は、学校というのは、教師以外は立ち入るべからず、といった雰囲気がとても強かったと思いますが、今は、学校が抱える問題は複雑化しています。教員だけで対応しきれなくなっていると言え、他職種との連携は必須になっています。
また地域の連携も重要です。よくあるのが、DVや虐待での事例で、児童相談所はすでに、医師や弁護士や心理職が関わっていますが、職種だけではなく、例えば、警察や保健所など様々な機関が関わることを地域連携と言います。
このようなチームや連携での公認心理師の役割を学んでおくことが重要です。チームでは情報共有は生命線ですので、コミュニケーション能力は必須です。また心理職である以上、心理面接やテストができるということは前提にあると思います。とはいえ、自分の責任範疇と限界を知っておくことも求められます。だからこそ、心理療法を用いる際には、エビデンスのあるものを使うことになります。また、現任者講習でも強調されていましたが、心理的アセスメントが重要で、要支援者だけではなく、自分、所属する機関についてもアセスメントすることが必要だとのことです。

ブループリントを見ると、まず気になるのは幅広くすべての範囲を網羅していることです。しかし、一方で出題割合が、2%の科目もあれば、9%の科目もあります。ブループリントに沿えば、やはり気になるのは出題割合の多いところで、そこから勉強しようという気になります。福祉心理学は9%でしたが同じく9%の分野に健康・医療心理学があります。
この分野ではまずは「ストレス」が重要キーワードです。事例問題でも出題されています。ストレスという歪みを引き起こす刺激を「ストレッサー」と言われます。これらの定義は複数ありますので、押さえておきましょう。次に「ストレス反応」に注目しましょう。身体的反応、心理的反応、行動的反応とあります。あわせて「コーピング」も重要キーワードです。要するに、ストレスに「打ち勝つ」「減少させる」「受容する」などの行動やその努力を指します。コーピングの分類としては、「問題焦点化型コーピング」:問題を直接解決することを目的とする。「情動焦点型コーピング」:ストレッサーによって発生した感情を調整する。「ストレス反応の緩和」については、ソーシャルスキルの向上がよく言われます。次にストレスに弱いという「脆弱性」も重要ワードです。ストレスの強さが同じでも、脆弱性が大きいほど、精神疾患は発症しやすくなります。さらに心身症については、心身医学の定義する疾患はかなりの量があります。問題としては出しやすいでしょう。

公認心理師試験の勉強で、多くの人が勉強をするかしないかで迷うと言われるのが、研究法系かと思います。ブループリントで言えば、5 心理学における研究、6 心理学に関する実験の合わせて4%ですから、問題数としては少ないと言えますから、判断が難しいところです。公認心理師は、卒論も修論も要件には入っていませんので、研究実績は必要ないとも言えます。しかし、心理学は科学としての歴史が重要ですので、公認心理師に研究的視点は必要ですし、臨床心理士は研究能力は必須です。
研究と一口に言っても、例えば、横断的研究、縦断的研究と言われるものから、量的、質的研究もあります。あるいは最近は混合研究というものもあります。
心理学の研究を行う上で、よく用いられる用語が、相関関係、因果関係です。両者は別物で、相関があっても、因果関係があることにはなりません。
相関も重要です。一般の研究で多いのは、相関を見ることです。相関係数の値を知る必要があり、0.7から1.0なら強い相関があるとされます。負の相関という言葉も覚えておきたいところです。
実験ももちろん重要な研究法ですが、因果関係の特定を最終的な目標とし、実験者が特定の条件を作り出し、その条件下で客観的に行動観察を行う方法とされます。心理学の経験のない人にとっては、かなりハードルが高い言葉が並びますし、心理学を学んだ人でも、回避してきたと言われることも多い分野です。4%をどうするかはよく検討しましょう。
また、ブループリントには、④心理学・臨床心理学の全体像3%という項目がありますが、これも悩ましいところです。臨床心理士の方はあらためて勉強するかどうか、迷うところかと思います。臨床心理士でない方は、どちらかというと、勉強した方が良い項目かと考えられます。とは言え、心理学、臨床心理学の「全体像」と言われても、あまりにも巨大で、縦軸、横軸全部見ていくと、正直割に合わない気になります。心理学は歴史自体は長くはありませんが、人々の関心を呼びやすい学問分野でもありますので、その集積は膨大なものがあり、それが基礎分野と応用分野にわけられると、その分量はかなりの量になります。これをコンパクトに勉強するというのはかなりのハードルの高さです。

 また、ブループリントの9%の項目には18.教育に関する心理学があります。科目名としては、教育・学校心理学となります。ここで重要キーワードになるのは、学校、スクールカウンセラー、学校アセスメント、チーム学校、不登校、教育支援センター、教育機会確保法、いじめ、発達障害、、発達障害者支援法、特別支援教室などが挙げられます。その他、今、必修の授業でも扱っていますが、「相対的貧困」という言葉も重要です。絶対的貧困とは別物です。ネット右翼が叩きたがるのは、この相対的貧困です。
まず、心理職として、様々な機関があります。まずは教育委員会管轄の教育相談センター・教育相談室、教育支援センター(適応指導教室)が挙げられます。特に親が相談することの多い機関です。不登校、いじめ、発達、情緒の問題、学業問題など、多様です。学校現場における心理職は、スクールカウンセラーが一般的ですが、最近は、スクールカウンセラー以外にもいます。スクールカウンセラーについては、以前も述べましたが、スクールカウンセラー等活用事業実施要領が文科省より出ています。

「教育支援体制整備事業費補助金(いじめ対策・不登校支援等総合推進事業)交付要綱第20条の規定に基づき、スクールカウンセラー等活用事業の実施について必要な事項を、本実施要領で定めるものとする」
から始まっていますが、スクールカウンセラーになれる人は以下のように記されています。
「次の各号のいずれかに該当する者から、実績も踏まえ、都道府県又は指定都市が選考し、スクールカウンセラーとして認めた者とする」
公認心理師、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士、精神科医、児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、学校教育法第1条に規定する大学の学長、副学長、学部長、教授、准教授、講師(常時勤務をする者に限る)又は助教の職にある者又はあった者、都道府県又は指定都市が上記の各者と同等以上の知識及び経験を有すると認めた者。このようになっています。
スクールカウンセラーは、平成27年度で、小中高であわせて、22,373校で配置されています。今や教育において不可欠のものになりつつあると思われます。

以上、長くなりましたが、このような手順で勉強を始めて、進めていくのが良いのではないかというサンプルをあげてみました。

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塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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