ケースフォーミュレーション
いわゆる自閉症はブループリントにも出ますし、ここまでの公認心理師試験にもたくさん出題されました。必須項目であることは明らかです。
第1回試験
問32 注意欠陥多動症/注意欠如多動性障害〈AD/HD〉の診断や行動特徴として、不適切なものを1つ選べ。
① 女性は男性よりも主に不注意の行動特徴を示す傾向がある。
② 診断には、複数の状況で症状が存在することが必要である。
③ 診断には、いくつかの症状が12歳になる以前から存在している必要がある。
④ 診断には、不注意、多動及び衝動性の3タイプの行動特徴を有することが必要である。
⑤ DSM-5では、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の診断に併記することができる。
ここでは選択肢⑤で出ており、DSMの問題とも言えますが、両者は不可分です。
同じく第1回試験
問42 言語の障害について、最も適切なものを1つ選べ。
① 感覚性失語は多くの場合Broca野の損傷が原因となる。
② ディスレクシアは音声言語の理解と産出の障害である。
③ 吃音は幼少期に始まる傾向にあり、女児よりも男児に多い。
④ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉では統語論的な能力につまずきをもつことが多い。
これは解答は③ですので、④は不適切ということになります。
統語論とは、文中の語順や配列(語の結合、句・節などの機能)を対象として、文の構造を記述する研究分野を指します。大雑把に言えば、私たちが「構文」とか「文法」となんとなく言っているものと言えばわかりやすいと思います。ただし、文法に沿って文を作っても、意味不明ということはよくあります。これは意味論です。同じ文でも文脈や状況が異なれば違う意味になり、どのような意味なのかを判断するために必要な知識を語用論的知識と呼びます。この語用障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)が顕著なものとして認識されています。そのため、「統語論」的な能力のつまずきではなく、「語用論」的な能力のつまずきをもつことが多いということで不適切です。
問75 24歳の男性A。Aは大学在学中に自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の診断を受けた。一般就労を希望し、何社もの就職試験を受けたが採用されなかった。そこで、発達障害者支援センターに来所し、障害者として就労できる会社を紹介され勤務したが、業務上の失敗が多いため再度来所した。
この時点でのAへの支援として、不適切なものを1つ選べ。
① ジョブコーチをつける。
② 障害者職業センターを紹介する。
③ 介護給付の1つである行動援護を行う。
④ 勤務している会社にAの特性を説明する。
⑤ 訓練等給付の1つである就労移行支援を行う。
③介護給付の行動援護とは、「行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護」とされるため、問題文中のAさんはこれに該当しないと言えます。よく見たらわかるような気もしますが、ちょっと難しい問題です。
問91 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の基本的な特徴として、最も適切なものを1つ選べ。
① 場面緘黙
② ひきこもり
③ ディスレクシア
④ 言葉の発達の遅れ
⑤ 通常の会話のやりとりの困難
このような自閉症について直接的な問題もいくらでも作れますので、今年も要注意です。
当塾の解説では、自閉スペクトラム症の基本症状としては、「社会的コミュニケーション及び対人的相互反応における持続的欠陥」と「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式」の大きく2つに分けられる。「社会的コミュニケーションの困難さ」とは、言葉のオウム返し、一方的な会話などが挙げられる。また、他者の気持ちや感情を読み取りにくいことや言葉を使って気持ちや思いを表現することが難しいことがある。「限定的な行動、興味、反復行動」とは、同じ質問を何度もしたり、物事に対して決まった手順を何度も行い、手順が変わると混乱することが挙げられる。(DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き pp.26-29 医学書院 参照)」
となっています。①から③までは不適切です。また
「ICD-10やDSM-IVのアスペルガー症候群は、認知・言語発達の遅れがないこと、コミュニケーションの障害がないこと、そして社会性の障害とこだわりがあることで定義されている。そのため、アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症の基本的な特徴として、言葉の発達の遅れを挙げることが妥当ではないと考えられる。⑤の選択肢「通常の会話のやりとりの困難」は、先の挙げたASDの基本症状「社会的コミュニケーションの困難さ」に該当すると考えられる。」
となっています。
問110 反応性アタッチメント障害について、誤っているものを1つ選べ。
① 認知と言語の発達は正常である。
② 乳幼児期のマルトリートメントと関係が深い。
③ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉と症状が一部類似する。
④ 常に自分で自分を守る体制をとらざるを得ないため、ささいなことで興奮しやすい。
⑤ 養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効である。
①が正解です。③に自閉症がでますが、症状が一部類似するのはよく知られています。
第2回試験
問15自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の特徴のうち「中枢性統合の弱さ」として説明できるのは次のうちどれか、正しいものを1つ選べ。
①特定の物音に過敏に反応する。
②他者の考えを読み取ることが難しい。
③目標に向けて計画的に行動することが難しい。
④細部にとらわれ大局的に判断することが難しい。
⑤状況の変化に応じて行動を切り替えることが難しい。
④が解答です。「中枢性統合」を知らなければ答えられません。気合いで当たるかもしれませんが。当塾の教材では、「中枢性統合仮説は、フリス(U.Frith)である。中枢性統合とは全体を把握できる能力のことであり、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は同時に複数の情報が把握できないため、中枢性統合が弱いとする説である。」と説明されていました。
問91自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉について、正しいものを1つ選べ。
①男性よりも女性に多い。
②知的障害を伴うことはない。
③精神障害者保健福祉手帳の対象ではない。
④放課後デイサービスの給付対象ではない。
⑤感覚過敏はDSM-5の診断基準の中に含まれている。
これはDSM-5でこのトピックを見ているかどうかできまる問題です。⑤が正答です。
問129 PECSの説明として、正しいものを2つ選べ。
①質問への応答から指導を始める。
②応用行動分析の理論に基づいている。
③身振りを意思伝達の手段として用いる。
④補助代替コミュニケーションの一種である。
⑤自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉ではない子どもに、より効果的である。
PECSは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の子どものコミュニケーション指導法です。この知識が問われた問題です。TEACCHも併せて勉強しておきたいところです。いずれもコミュニケーションに関係します。
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